第17回日本クリティカルケア看護学会学術集会

講演情報

プラクティスセミナー(共催)

[PS18] この社会を変えるのは「誰」なのか? ーデジタルリビングウィルで守るあなたの意思ー 共催:日本電気株式会社

[PS18-01] [プラクティスセミナー ]この社会を変えるのは「誰」なのか? 
ーデジタルリビングウィルで守るあなたの意思ー

○荻沼 久美子1、峯尾 舞2 (1. 北原国際病院 看護科、2. 北原国際病院 リハビリテーション科)

キーワード:デジタルリビングウィル、救急医療

想像してください。

 ある日、帰宅途中のあなたの目の前で高齢者が転倒し頭部を受傷しました。
あなたは救急要請した後、神経所見を確認。明らかな麻痺はみられないが、意識は朦朧としており、名前も生年月日も住所も言えません。所持品からも身元がわかるものはありません。
救急隊到着後は、身元不明のため推定年齢と性別だけで病院選定が開始されました。
遅れて警察が介入するも、身元不明、高齢者、認知症の疑いという触れ込みで、病院の受け入れが進みません。
20分経過後に東京ルールが発動され、司令センター、病院コーディネーター含め病院選定が多方面で始まりましたが、それでも受け入れ先が見つからず、50分経過後に、患者の右半身の動きがなくなり、意識状態は悪化し、左瞳孔が散大し対光反射の消失が確認されました。

 上記は日本の救急医療の現場で、すでに起こっていることです。

 患者さんがあなたの勤務する病院に搬送されてきたら、医療者であるあなたは何とかして目の前の命を助けたいと思うでしょう。
 しかし、あなたは同時に考えなければなりません。

・後遺症が残るとしたら、本当に本人は救命を望んでいたでしょうか?
・後から連絡がついた家族からは、本人は救命を希望していなかった。
 勝手に病院がしたことだから治療費は支払わないと言われたらどうしますか?
・支払い能力がなければ治療費を全て国は補助してくれますか?
・もし亡くなった場合、遺体は誰が引き取りに来てくれますか?

 ご存知の通り日本は世界一の高齢社会。今後も少子高齢化が進み近い将来、現行の国民皆保険制度は継続できなくなります。これからの日本で私たちが安心して生きていくためには、新たな仕組みが必要なのです。我々北原グループは持続可能な医療・社会を実現する「八王子モデル」を開発しています。開発中のシステムである、デジタルリビングウィル(以下DLW)は、個人の意思情報を事前に登録することができるデータベースで、救急医療に必要な情報も含まれているため、患者の病院受け入れ、検査・治療が迅速に行えるようになります。DLWを北原ライフサポート倶楽部(以下TLS)と連携する事で救急医療が抱える課題だけでなく、高齢社会で起こる様々な課題を解決できる可能性があります。

 今回はDLW、TLSの現状と課題、今後の展望についてご紹介します。
PS18-01