第21回日本救急看護学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

救急外来看護

[O14] O14群 救急外来看護③

2019年10月4日(金) 16:20 〜 17:20 第9会場 (1F 中会議室103)

座長:新田 直巳(市立札幌病院 救命救急センター)

[O14-4] ACS患者のDTBT短縮に向けた取り組み~ACSチェックリスト導入による効果と救急外来滞在時間の短縮化~

横山 誠1, 本田 智治1, 山田 勇斗1, 川尻 はるか1, 渡辺 ゆめの2, 田平 直美1, 井山 慶大3 (1.長崎大学病院高度救命救急センター, 2.長崎大学病院, 3.長崎大学病院 循環器内科)

背景
急性冠症候群(以下ACS)患者は、冠動脈粥腫の破綻とそれに伴う血栓形成により冠動脈内腔が急速に狭窄、閉塞し、心筋が虚血、壊死に陥る病態を示す症候群であり、ACSの診断には迅速な診断・治療が求められる。そのため急性冠症候群診療ガイドラインやアメリカ心臓協会(以下AHA)ガイドラインでは、Door-to-Balloon-Time(病院到着から閉塞血管の再灌流を得るまでの時間:以下DTBT) を少なくとも90分以内が目標とされており、発症から再灌流までの総虚血時間をいかに短くするかが重要となる。当院におけるDTBTの実態を知るため、2015年4月から2017年3月まで過去2年間のACS患者で緊急経皮的冠動脈インターベーション(以下プライマリーPCI)を実施した患者のDoor-to-ECG時間、救急外来滞在時間及びDTBTの調査をおこなった。結果、平日時間外や休日において、DTBTは全体の43%が目標とされるDTBTの90分以内を達成する事ができていなかった。原因の一つとして、院内におけるDTBT短縮化にむけたACS対応の統一した取り組みやマニュアルはなく初期対応を行っていることが考えられた。そこで、今回2018年4月より当院独自のDTBT短縮にむけたACSチェックリストを循環器内科医師と共に作成し運用を開始し、ACSチェックリストの導入後の効果について検証したので報告する。
目的
ACSチェックリスト導入後のDoor-to-ECG時間、救急外来滞在時間及びDTBTにおける効果について検証する。     
方法
1.研究デザイン:後方視的観察研究
2.対象およびデータ収集:
  2015年4月から2017年3月までに当院平日時間外と休日でプライマリーPCIを実施した患者73例と、ACSチェックリスト
  導入後の2018年4月22日から2018年11月末までに当院の平日時間外と休日でプライマリーPCIを実施した患者22例のう
  ち転院搬送症例5例を除く17例を対象として、Door-to-ECG時間、救急外来滞在時間及びDTBTを比較検討した。
3.分析方法:SPSSバージョン24を用い記述統計を行った。
4.倫理的配慮:長崎大学病院倫理委員会の承認を得た(許可番号:19021832)
結果
ACSチェックリスト導入前後でDoor-to-ECG時間に両群で差はなかったが、ACSチェックリスト導入前の救急外来滞在時間は36分(中央値)、チェックリスト導入後は24分(中央値)と12分の時間短縮となっていた。チェックリスト導入後のDTBTは66分(中央値)であり、チェックリスト導入前後で1分の時間短縮に繋げることができた。
考察
ACSチェックリスト導入により救急外来滞在時間の短縮に繋げることができた。このことはチーム医療の3つの要素を展開できたことによって時間短縮化に繋がったと考えられる。1つ目に医師・看護師共にDTBTの短縮化という目標を共有化し、心電図までの時間、救急外来滞在時間及びDTBTを意識したこと、2つ目にチェックリストを使用し業務の効率化を図り情報伝達や進捗状況を把握しあうことで情報を共有化したこと、3つ目に医師の診断のための診察に時間を費やすことができるようお互いが連携・協働し役割を明確化させたことが今回の結果に繋がったのではないかと考えられる。さらに救急外来滞在時間の短縮によって、わずかではあるがDTBTの短縮にも繋がったと考えられる。
結語
ACSチェックリスト導入により救急外来滞在時間の短縮に繋がり、その結果DTBTも短縮できる可能性がある。