第21回日本救急看護学会学術集会

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一般演題(口演)

救急外来看護

[O14] O14群 救急外来看護③

Fri. Oct 4, 2019 4:20 PM - 5:20 PM 第9会場 (1F 中会議室103)

座長:新田 直巳(市立札幌病院 救命救急センター)

[O14-5] Hybrid Emergency Roomにおける初療記録の充実

松本 奈々, 佐藤 真矢, 下池田 百合, 澤井 朋子 (地方独立行政法人 大阪府立病院機構 大阪急性期・総合医療センター)

【はじめに】
A病院救命救急センター(以下、当センター)は、2011年に世界で初めてIVR-CTを設置したHybrid Emergency Room(以下Hybrid ERとする)を導入している。Hybrid ERでは患者の移動なくCT検査や緊急手術が行え、治療介入までの時間が短縮されたことは先行研究により明らかとなっている。さらに、手術が同時並行で行えるため、スピードが求められるようになり、初療記録は煩雑となった。
当センターの初療記録は2012年より、電子カルテの緊急時記録ツール(以下、緊急モード)を使用している。緊急モードとは、医師からの指示を、直接カルテ記載できるシステムである。記録担当者は、初療対応時にそれを用い、医師からの指示や患者状態等を記録している。しかし、外傷症例検討の際に、初療記録の内容において過誤や欠落、時間の乖離が散見される状態であり、緊急モードを見直す必要があると考えた。そして、緊急モード内の機能追加を行うことで、正確な初療記録を目指した。
【目的】
 緊急モードに追加機能を施したことで正確な初療記録ができる。
【方法】
1)期間:2017年4月1日から2019年3月31日 2)対象:期間中にHybrid ERで止血術を実施した136症例 3)追加した機能:タイピング入力を行っていたCT撮影開始と終了、術式をワンクリックで入力できるようにした。術式入力操作に、手術コストを紐づけ、単一操作でコスト取得をできるようにした。 4)スタッフへの教育方法:初療記録の入力必須項目について、カンファレンスを実施した。 5)データの収集方法:録画ビデオを用いて記載内容と時間の整合性、記録担当者の動きを調査した。「記載内容」は、初療入室、初療記録の開始と終了、手術開始と終了、処置コスト等の10項目とした。「時間」は、初療入室時間・CT撮影開始時間・手術開始終了時間の4項目とした。正確な時間の定義は録画ビデオの時間から誤差1分以内とした。 7)データ分析方法:収集したデータから正確な初療記録の割合を算出し、後方視的に緊急モードの機能追加前後で比較した。 8)倫理的配慮:院内倫理審査委員会の承認を得た。
【結果】
緊急モード改変前のA群が73例、改変後のB群で63例であった。「記載内容」の整合性は、初療入室で69%から100%と31%の上昇で一番高く、次にコスト入力が38%から54%と16%の上昇であった。「時間」は、手術開始時間が60%から82%と22%の上昇で最も高く、次いでCT撮影開始時間が75%から90%と15%の上昇であった。「記載内容」では10項目中8項目、「時間」については4項目全てにおいて改善があった。
記録担当者の動きでは、初療対応時に記録を中断し、処置介助や薬剤作成に介入している姿が観察された。
【考察】
「記載内容」では、入力必須項目について、教育したことで、初療入室の項目の整合性が上昇したと考える。また、術式入力に手術コストを紐づけたことが、コスト漏れを防いだと考える。「時間」では、CT撮影や手術開始終了のワンクリック入力を導入し、オンタイムな記載が可能となったことが整合性の向上に繋がったと考える。
今回、緊急モードを見直し初療記録の整合性は向上した。しかし、記録担当者が処置等に介入し、記録が不十分になっていることから、役割が徹底出来ていないことが考えられる。今後は、初療記録の現状を踏まえてスタッフへ教育し、初療記録への意識付けを行うことや、初療記録を参照しながらデブリーフィングを行い、記録担当者としての役割を振り返ることが、正確な初療記録に繋がると考えた。