第21回日本救急看護学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

救急外来看護

[O14] O14群 救急外来看護③

2019年10月4日(金) 16:20 〜 17:20 第9会場 (1F 中会議室103)

座長:新田 直巳(市立札幌病院 救命救急センター)

[O14-6] 脳卒中スクランブルにおける救急外来看護師に求められる役割

大麻 康之, 伊藤 敬介, 太田 剛史 (高知県・高知市病院企業団立 高知医療センター)

はじめに 脳卒中治療ガイドライン2015(追補2017)では、急性期脳梗塞に対してアルテプラーゼ静注療法(以下、t-PA)や血管内治療による治療開始および再開通までが短時間であるほど良好な転帰が期待できるとされている。そのため、A病院では2015年から急性期脳卒中に早期に対応できるプロトコール(以下、脳卒中スクランブル)を導入した。脳卒中スクランブルは、急性期脳卒中が疑われる症例に対して、病院到着後、迅速に体重測定・採血・CTを行い、t-PA適応症例にはt-PAを投与し、主幹脳動脈閉塞が疑われる症例では、早期に血管内治療を行うものである。今回、脳卒中スクランブルに沿った迅速な治療を行い臨床転帰が改善した症例を振り、救急外来看護師に求められる役割について検討する。 目的 脳卒中スクランブルにおける救急外来看護師に求められる役割について検討すること。研究方法 事例検討。 事例 70歳代男性。11時55分に急な脱力を認めたため12時58分A病院へドクターヘリ搬送となる。CTでの画像診断後13時18分カテ室搬入され、13時20分t-PA静注となる。13時22分動脈穿刺し右M2閉塞を認めたため15時00分血栓回収される。 倫理的配慮 対象施設臨床研究審査委員会の承認を得て実施した。 結果 救急外来看護師は、現場からの右共同偏視、左半側空間無視、左上下肢完全麻痺、心房細動ありの情報から主幹脳動脈閉塞を予測し、t-PA投与・血管内治療の可能性が高いことを予測した。そのため、脳卒中スクランブルに則り、CT室・カテ室に事前の情報提供を行った。患者が病院到着後は、現場で採取した血液検体を即座に検体検査室へ提出した。来院した家族に対しては、脳外科医師と早期に接触できるための場の調整を行った。CT撮影後に体重測定を行い、迅速なカテ室への移動とt-PA投与の準備を行った。その結果、来院後22分でt-PA投与、122分で再開通となった。来院時NIHSS21点だったが、入院8日目にはNIHSS0点、mRS0で自宅退院となった。 考察 A病院は脳卒中スクランブル運用開始後、脳梗塞発症から血管内治療による再開通までの時間が短縮(437分VS241分)したことで、3か月後のmRS0-2が15%から42%に増加した。早期治療によって臨床転帰が改善する結果がでたため、主幹脳動脈閉塞が疑われる症例に対しては74%の症例で早期の血管内治療が行われた。そのための環境整備として、救急外来看護師は、学習会の参加、体重測定用ストレッチャーの設置、現場での採血の徹底、家族所在確認の徹底などを行った。それによって、本症例では現場の情報から主幹脳動脈閉塞を予測し、早期の血管内治療を目指して、各部門との連絡調整、家族と医師との場の調整を行い迅速なt-PA投与、血管内治療を行えた。脳卒中スクランブルを運用するうえで救急外来看護師が担う役割は大きい。救急外来看護師は、救急外来全体の診療の進行状況に応じて適切な人・物・時間・環境・情報の調整力が必要である、といわれている。脳卒中スクランブルも、こうした予測・準備・調整といった役割を救急外来看護師が担うことで早期t-PA投与、血管内治療が可能となる。今後は、急性期脳卒中患者が適切な治療を行うことができる施設にさらに搬送されるように救急隊との連携を行うことが課題である。 結論 救急外来看護師が、急性期脳卒中治療に必要な知識の習得や必要物品の確保などの環境整備を行ったことで、事前情報からの病態予測、統一した方法での準備・調整ができるようになり、脳卒中スクランブルに則った迅速な治療が可能となった。