第21回日本救急看護学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

終末期・グリーフケア

[O15] O15群 終末期・グリーフケア

2019年10月5日(土) 10:10 〜 11:00 第6会場 (3F 中会議室303)

座長:岩崎 利恵(宮崎県立宮崎病院 ICU)

[O15-5] エンド・オブ・ライフケアを提供する看護師としての心肺蘇生法~DNARを撤回し心肺蘇生施行事例から得た課題~

豊田 隼平, 中村 香代 (災害医療センター)

【はじめに】突然の発症や受傷により心肺停止となった患者に対して、いち早く良質な心肺蘇生術を施すことは救命率に直接関わる。そのため、救急看護師にとって心肺蘇生の技術を身につけることは必須である。しかし、重篤な状態で治療を受けるICU病棟に入院中の患者が、深刻な状態から心肺停止状態へ陥った場合、心肺蘇生法を実施するかどうかについては、不測の事態からの心肺停止状態とは違い事前にDNARを選択しておき、心肺蘇生術を行わないという場合もある。

今回、ICU入院中に心肺停止状態となり、一度蘇生した後にDNAR指示となった患者が面会中に再度心肺停止状態となった際、家族がDNARを取り消して心肺蘇生を実施したが蘇生することはなかった事例に関する倫理カンファレンスから、ICU看護師が心肺蘇生術を学ぶBLSコースにおいて、エンド・オブ・ライフケアに関するセクションを設けることの必要性について検討したことを報告する。

【目的】エンド・オブ・ライフケアを包括した心肺蘇生法学習会を構築することの必要性について検討する。

【方法】平成30年8月ICUへ入院した対象事例A氏の倫理カンファレンス内容についての後方視的分析。

【倫理的配慮】対象患者の個人情報の保護を遵守し、対象者が特定されないよう匿名での記述とした。倫理カンファレンスに出席した看護師の個人が特定されないよう配慮し、個々の意見は尊重され一概に正解はないことを前置きで宣言してカンファレンスを進行した。研究者はeAPRINを修了している。(AP0000183884)(AP0000160465)

【結果】倫理カンファレンスでは、DNARが取り消されたことに対し、目の前で心肺停止に陥った家族の心情に共感する意見が多かったが、医療者として心肺蘇生術を実施しても蘇生の可能性は低いと感じながら、実施したことにジレンマを感じていたという意見もあった。

【考察】心肺停止時に迅速で正確な心肺蘇生法を実施することは、救命において不可欠である。しかし、ICUでケアを受ける患者の中には、心肺停止状態に陥った場合どうするかについて検討する時間を有する人があり、心肺停止状態に陥った場合心肺蘇生術を施したとしても救命の望みが極めて低いことが予測されている終末期の場合も多い。心肺蘇生術を実施する場合は速やかにアプローチを開始しなければならないが、ひとたび実施者に迷いが生じた場合には、その質が脅かされてしまう。DNARという選択肢を持つ患者を多くケアするICU看護師として、正しく確実な心肺蘇生法を身につけておくこととともに、エンド・オブ・ライフケアの知識を包括した学習会を構築することは重要な課題であることが明らかとなった。