第21回日本救急看護学会学術集会

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一般演題(口演)

看護教育

[O17] O17群 看護教育③

Sat. Oct 5, 2019 9:00 AM - 9:50 AM 第7会場 (3F 中会議室304)

座長:藤井 美幸(国立国際医療研究センター病院)

[O17-5] ERでの血液培養検査の手順統一化からみる今後の課題

池澤 友朗, 田邊 光司, 酒井 由夏, 町田 清史 (医療法人近森会近森病院救急救命センター)

【目的】A病院ERでは、ひと月200~300件近い血液培養検査の検体が提出されているが、施行された血液培養検査のコンタミネーション検出率が高いことが問題となっており、その原因としてERという非常に煩雑な状況で、手順を統一化できていないことが考えられた。その事から、2017年に感染管理ベストプラクティスの手法を用いて手順の統一化を図りコンタミネーション検出率の減少に努めた。ガイドラインや文献を基に手順ごとのエビテンスを明らかにし、特に遵守してほしい手順を重点項目として、A病院ERで血液培養を施行するER・放射線科看護師を対象に教育を行った。教育前後の手順別遵守率とコンタミネーション検出率の推移を確認し評価を行い、その結果から考察される現状の課題と対策について明らかにした。

【倫理的配慮】A病院倫理委員会において、研究の可否について倫理的観点から審査を受け承認を得た。調査対象者へ文書で説明を行い調査票の提出をもって調査への同意を得た。

【方法】調査期間2016年~2019年3月。血液培養検査の手順書の作成を行い対象者への教育を2017年11月に施行。対象者はA病院ERで勤務するER、放射線科の看護師スタッフ。教育方法はER、放射線科それぞれのスタッフ会でイラスト手順書を配布し手順に沿って説明し、特に重点項目は遵守してもらうよう教育を行った。自己評価にて教育前、教育後、教育約1年半後で手順別遵守率を算出し、コンタミネーション検出率を月別で調査した。

【結果】重点項目の手順別遵守率については教育後に上昇し、1年半後もその推移を維持できている。ただ、手指衛生の遵守率(特に手技施行前)が教育前73%、教育後89%だったのに対し、教育1年半後は58%と大きく低下している結果となった。コンタミネーション検出率は教育前に比べ著名に低下してきているものの、月別によっては当院目標値3.0%を上回る事もみられている。また、A病院で施行されている血液培養検査の検体には採血者の名前を記載するルールを設けており、2018年にERが提出した血液培養より検出されたコンタミネーション菌の割合として、医師が約70%、看護師が約30%と医師が採血した検体のほうがコンタミネーション菌の割合が多い結果が明らかとなった。

【考察】重点項目の遵守率維持に関しては、コンタミネーション検出率の減少の結果が可視化され、教育対象者のモチベーションにもつながり継続して実践してくれていると感じている。その反面、手指衛生のコンプライアンスが低いという問題が明らかとなり、コンタミネーション菌の内容も皮膚常在菌の割合が高く、手指衛生の遵守率の低下も問題の一つと考えられた。手指衛生は病院が行う感染管理の中でも最も重要な手技の一つであり、積極的な注意喚起を行い、手順の重点項目に加え再教育を行うなど対応が必要であると考える。看護師に比べ医師のコンタミネーション検出率が多い結果となっている背景として、今回の教育は看護師対象にしか行っておらず、医師の手順の統一化ができていないことも問題の一つであると考えられる。また、医師は大腿動脈からの採血の割合が高く、多数の文献や先行研究でも鼡径部からの採血ではコンタミネーション検出率が上昇するという報告があり、今後は橈骨動脈などの上肢からの採血に切り替えるなど対応することが必要であると考える。今後、動脈血での血液培養採血の手順書を作成し、医師を対象にした教育指導を行い更なるコンタミネーション検出率減少へ向けた活動を行っていきたいと考えている。