第21回日本救急看護学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

看護教育

[O19] O19群 看護教育⑤

2019年10月5日(土) 11:10 〜 12:00 第7会場 (3F 中会議室304)

座長:船木 淳(神戸市看護大学 急性期看護学分野)

[O19-3] A病院におけるICLSコースの今後の課題 -チーム蘇生に関する学習方法とインストラクターへの意識調査から-

森 良実, 坂本 正貴, 白木 愛由子 (福岡市民病院 救急部)

【目的】
204床の急性期病院のA病院では患者急変の発見は9割が看護師であり、第一発見者は蘇生の必要性を判断し行動に移すことが求められる。そのため医療従事者対象の蘇生トレーニングであるICLSコースを実施している。受講により修得した救急蘇生スキルを継続するためには、定期的な反復学習が必要であり更にインストラクターとして指導することが自らの学習を促進しチーム蘇生のスキル向上維持に繋がる。
しかしチーム蘇生に関する継続的な学習が定着しておらず繰り返し受講している看護師は1割未満、またインストラクターは救急部看護師に限られておりインストラクションに関する不安や困難感が聞かれている。病棟にもインストラクターが存在することで急変時のチーム蘇生が円滑に進むと考えられるが院内全体でのインストラクター育成には至っていない現状がある。
そこで今回、ICLSコース受講後の病棟看護師とインストラクター救急部看護師に対して、チーム蘇生に関する学習方法とインストラクターへの意識調査を行い今後の課題を明らかにする。

【方法】
対象:2017年ICLSコース受講の病棟看護師8名とインストラクターの救急部看護師3名
データ収集・分析方法:病棟看護師にICLS受講後のチーム蘇生に対する学習方法についてとインストラクターへの意欲について、救急部看護師にインストラクターとして活動することについて半構成的面接を行い録音し逐語録を作成。コード化、カテゴリー化した。

【倫理的配慮】
A病院倫理審査委員会の承認を得て対象者に研究の目的方法を口頭と文書にて説明した。面接は個室で行い内容は個人が特定されないよう管理し対象者に不利益とならないよう配慮した。

【結果】
4つの課題が抽出された。
[ICLSコースの繰り返し受講ができていない]は、病棟看護師の「1度受講しておけばよいと思っていた」「繰り返し受講している看護師はいない」等のコードから構成された。
[ICLSコースに関する活動環境の整備不足]は、病棟看護師の「インストラクターのやり方がわからない」、救急部看護師の「指導内容が明確にされていない」等から構成された。
[自身の性格や経験の少なさから感じるインストラクションに対する不安]は、病棟看護師の「自信がないからできない」、救急部看護師の「人前で話すのは苦手」等から構成された。
[インストラクターとして活動する際の勤務状況に対する不満]は両方の看護師からの意見の「週休での参加はつらい」「休み希望を出しにくい」等から構成された。

【考察】
チーム蘇生に関する学習としてICLSコースの繰り返し受講ができていない原因は、ICLS コースを繰り返し受講することで学習に繋がるという認識が低かったことが考えられ、ICLS コースの目的の提示、学習効果は定期的・継続的なICLSコース受講により得られることを提唱していく必要がある。受講後インストラクターとして活動できる環境を確保するため、インストラクター取得方法の提示、インストラクター講習会の実施、指導内容の統一が必要である。またインストラクターとして活動することがチーム蘇生に関する学習の機会となることやプレゼンテーション能力の向上にもつながることを提示する必要がある。
さらに、病棟でのチーム蘇生における看護の質の向上のためには、ICLSコースの受講やインストラクターとして活動する事への積極的な支援が必要であり、また参加者への勤務的配慮が必要であるため、看護管理者への働きかけが重要である。