第21回日本救急看護学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

看護教育

[O19] O19群 看護教育⑤

2019年10月5日(土) 11:10 〜 12:00 第7会場 (3F 中会議室304)

座長:船木 淳(神戸市看護大学 急性期看護学分野)

[O19-5] 当病棟の急変対応力向上への取り組み~救命のプロフェッショナルチームを目指して~

小出 裕己, 渡辺 智晴, 和蛇田 昂平, 鳥畑 麻衣 (仙台厚生病院)

【はじめに】
 当病棟は一般病床52床とCCU4床を併設している循環器内科病棟である。2018年重症度・看護必要度は、CCUは無論、一般病床も平均34.65%と高く重症患者が多く入院している。看護師の特徴は経験年数1~3年目の看護師が3割であり、部署経験年数でみても平均4.6年と比較的若い看護師層である。このような病棟背景の中、年間10件程度のCPRが行われている。その発生時刻はスタッフ人数が少ない夜間帯に多く、少人数でも救命処置が行えるよう、的確な急変対応技術習得が求められる。しかし、病院全体や病棟での急変対応訓練を継続するシステムは確立されておらず、技術習得や訓練は各個人に委ねられていた。そのため実際のイベント発生時、1~3年目の若い看護師は初期対応を躊躇し、先輩看護師の指示を待つ場面が多く見られる。また、リーダーの采配も熟練度によって大きく差が出ている現状があるため、救命率を向上できるよう、当病棟看護師の急変対応技術習得が急務となっている。
【目的】
病棟看護師の急変対応力の向上
【方法】
 1分1秒でも早いCPR開始は、患者の生命予後に大きく関わることである。そのため本調査では、急変対応力をCPA発生からCPR開始までの時間で評価し、その時間の短縮をもって急変対応力が向上したこととする。CPA発生からCPR開始までの時間の収集は、調査者が急変時の心電図モニターから測定し収集を行った。
 上記の目的達成のため、一つ目に、病棟で起こりうる急変シナリオに沿った急変対応チーム訓練プログラムを作成し、1トレーニング5~6名程度で、月に3回程30分間の急変対応チーム訓練を行った。二つ目に、経験年数を問わずに急変初期対応実施を期待し、急変対応ポケットマニュアルを作成し配布した。また、この取り組み前後で急変対応に対する質問紙調査を実施した。質問紙は、VASの尺度を用いた独自に作成したもので、病棟看護師を対象に行った。
【結果】
 2018年度は、CPRを行った急変は7件であった。2017年度はCPA発生からCPR開始まで平均1分30秒かかったのに対し、2018年度は致死性不整脈発生からCPR開始まで平均26.6秒と大幅な短縮がみられた。質問紙調査において、「躊躇せずにCPR開始ができた」との意見が多く聞かれ、チーム訓練前の急変対応に対する不安はVAS:9cmに対し、チーム訓練後はVAS:6.4cmまで低下した。また、ポケットマニュアル導入に関する質問紙調査では、「急変時に活用できた」「急変時に見ることは無かったが、日々の業務の折にポケットマニュアルを見て振り返る事ができた」との意見があがった。
【考察】
 今回急変対応チーム訓練を行い、CPR開始までの時間を短縮することができたが、日々の訓練により急変に対して技術的・精神的な準備を整えることができるようになったことが要因として考えられる。急変している患者を目の前にして、救命に対する不安や行動を起こすことへの躊躇いが、訓練によって減少したと考える。ポケットマニュアルに対しては、焦って思考がまとまらなくなった時に、適切な行動に導く媒介として有用な一助となったと考えられる。
 今後も急変対応訓練のシステム構築を行い、急変対応力のさらなる底上げを目指した取り組みをしていきたい。
【倫理的配慮】
 病棟看護師には、急変対応チーム訓練の参加は自由意志であること、不参加による不利益は生じないことを説明した。また、質問紙調査を行う際、回答をもって本調査に同意を得る形をとり、個人が特定されることのないよう非記名とした。