[O21-3] 救命救急センターICUにおける気管チューブ自己抜去に関する現状分析と今後の課題
【はじめに】ICUにおける気管チューブの計画外抜管は自己抜管であることが多い。自己抜管は呼吸状態の悪化や再挿管など患者に苦痛を与える。先行研究では自己抜管患者の98%が、緊急入院であること、患者のニードの把握不足、説明不足が要因となっていることが報告されている。さらに不適切な鎮痛剤の投与や、不確実な抑制方法、看護師の事故防止に対する認識不足などの関連も明らかとなっている。A病院救命救急センターICUにおいても自己抜管は散見されており、発生時にカンファレンスを行い改善策を提示しているが、件数の減少は認めていない。事例ごとの振り返りだけでは現状の分析が不十分であると考え、自己抜管事例を収集して傾向や要因を改めて分析し、気管チューブを安全に管理するための課題について検討した。
【目的】自己抜管の要因を分析し今後の課題を検討すること
【研究方法】方法:診療録による単施設後ろ向き観察研究
データ収集期間:2015年4月1日〜2019年3月30日
対象: A病院救命救急センターICUにおいて医療事故として報告された気管チューブの自己抜去事例
分析方法:診療録による単施設後ろ向き観察研究
調査項目:患者の属性(年齢・性別・主病名)、Richmond Agitation-Sedation Scale(RASS),チューブの種類、呼吸・循環動態、合併症、人工呼吸器設定、勤務帯、再挿管率、せん妄の有無、血管作動薬、自発呼吸トライアル(以下SBT)実施率、鎮痛・鎮静状況、身体拘束の有無、ICU滞在期間
倫理的配慮:所属施設の倫理委員会の承認を得て実施した。得られた情報から個人が特定できないよう配慮した。
【結果】期間中の気管チューブ自己抜去は、2015年度4件、2016年度3件、2017年度2件、2018年度4件の合計13件であった。患者は平均年齢62歳(±18)、男性7名(54%)であった。主病名は多発外傷8件(62%)、脳血管疾患4件(31%)であった。夜勤帯での発生が10件(77%)で、再挿管になったのは7件(54%)、非侵襲的陽圧換気療法(以下NPPV)となったのは1件(8%)であった。11件(85%)が鎮痛剤を使用していたが、疼痛評価を経時的に記録されていた事例は0 件であった。身体抑制は11件(85%)で実施していた。自発呼吸トライアル(SBT)実施は0件であった。報告書に記載されていた自己抜去の原因は、体勢の崩れが5件(39%)、抑制の緩みが2件(8%)であった。再挿管に至らなかった事例の呼吸器設定は、吸入酸素濃度(FiO2)0.4以下が71%、呼気終末陽圧(PEEP)8以下が100%であった。
【考察】本調査における自己抜管は13件であった。自己抜管の原因として、体勢の崩れが最も多く、次に抑制の緩みであった。身体抑制実施率は85%であり、ほとんどが抑制実施下で発生していた。挿管患者の抑制に関する調査では、覚醒している患者で86%、深鎮静患者に対しても半数以上が抑制を行っていることが報告されている。このことから、抑制で自己抜管を予防するのは困難である。そして、鎮痛鎮静に関しては、経時的な評価が行われていなかった。評価が行われていないことでコントロールが不十分となり、せん妄や不穏な状態となり、抑制が必要と判断されていた可能性もある。また、自己抜管後、再挿管に至らなかった事例が約半数あった。SBT開始基準の呼吸器設定になっているにも関わらずSBTは実施されていなかった。より早期にSBTを行い、人工呼吸管理日数を不用意に延長させないようにする必要がある。
【目的】自己抜管の要因を分析し今後の課題を検討すること
【研究方法】方法:診療録による単施設後ろ向き観察研究
データ収集期間:2015年4月1日〜2019年3月30日
対象: A病院救命救急センターICUにおいて医療事故として報告された気管チューブの自己抜去事例
分析方法:診療録による単施設後ろ向き観察研究
調査項目:患者の属性(年齢・性別・主病名)、Richmond Agitation-Sedation Scale(RASS),チューブの種類、呼吸・循環動態、合併症、人工呼吸器設定、勤務帯、再挿管率、せん妄の有無、血管作動薬、自発呼吸トライアル(以下SBT)実施率、鎮痛・鎮静状況、身体拘束の有無、ICU滞在期間
倫理的配慮:所属施設の倫理委員会の承認を得て実施した。得られた情報から個人が特定できないよう配慮した。
【結果】期間中の気管チューブ自己抜去は、2015年度4件、2016年度3件、2017年度2件、2018年度4件の合計13件であった。患者は平均年齢62歳(±18)、男性7名(54%)であった。主病名は多発外傷8件(62%)、脳血管疾患4件(31%)であった。夜勤帯での発生が10件(77%)で、再挿管になったのは7件(54%)、非侵襲的陽圧換気療法(以下NPPV)となったのは1件(8%)であった。11件(85%)が鎮痛剤を使用していたが、疼痛評価を経時的に記録されていた事例は0 件であった。身体抑制は11件(85%)で実施していた。自発呼吸トライアル(SBT)実施は0件であった。報告書に記載されていた自己抜去の原因は、体勢の崩れが5件(39%)、抑制の緩みが2件(8%)であった。再挿管に至らなかった事例の呼吸器設定は、吸入酸素濃度(FiO2)0.4以下が71%、呼気終末陽圧(PEEP)8以下が100%であった。
【考察】本調査における自己抜管は13件であった。自己抜管の原因として、体勢の崩れが最も多く、次に抑制の緩みであった。身体抑制実施率は85%であり、ほとんどが抑制実施下で発生していた。挿管患者の抑制に関する調査では、覚醒している患者で86%、深鎮静患者に対しても半数以上が抑制を行っていることが報告されている。このことから、抑制で自己抜管を予防するのは困難である。そして、鎮痛鎮静に関しては、経時的な評価が行われていなかった。評価が行われていないことでコントロールが不十分となり、せん妄や不穏な状態となり、抑制が必要と判断されていた可能性もある。また、自己抜管後、再挿管に至らなかった事例が約半数あった。SBT開始基準の呼吸器設定になっているにも関わらずSBTは実施されていなかった。より早期にSBTを行い、人工呼吸管理日数を不用意に延長させないようにする必要がある。