[O21-4] 人工呼吸回路における人工鼻と加温加湿器の人工呼吸管理の比較
【はじめに】気管挿管による人工呼吸管理の加湿方法にはフィルタ付き人工鼻(以下FHME)と加温加湿器(以下HH)の2種類がある。当救命センターでは、FHMEを組み込んだ呼吸回路を基本構成としており、気道浄化機能が低下し痰の粘稠度が高くなった場合に経験的にHHへ変更していた。そこで効率的な痰の粘稠度コントロールを目的とし2017年10月以降は人工呼吸器の基本構成をHH回路に変更した。
【研究目的】人工呼吸回路の加湿方法変更前後の呼吸管理の実際と患者への影響を検証し、FHMEとHHのどちらが優れた加湿方法といえるのか検討する。
【研究方法】研究デザイン:後方視的前後比較研究
対象患者:2016年10月から2018年9月に救命センターに入室し、侵襲的人工呼吸管理を受けた18歳以上の患者。加湿方法変更前の2016年10月から1年間をFHME群、変更後の2017年10月から1年間をHH群とした。除外対象は48時間以内の積極的治療辞退、低体温療法施行例、熱傷症例、体外循環装置使用例。
データ収集:電子カルテより患者基礎情報(年齢、性別、診断名、主疾患分類、APACHEⅡスコア)。比較指標として人工呼吸管理期間、排痰困難を理由とした再挿管数、吸痰目的の気管支鏡の有無、救命センター内死亡率とし、重症度による違いを検討するためAPACHEⅡスコアの中央値で層別化した。
解析方法:連続変数は中央値と四分位範囲、カテゴリー変数は患者数とパーセントで表記。2群間比較は、Mann-WhitneyのU検定、Fisherの正確検定、同等性の検定を使用。統計学的有意差はp値0.05未満とし、統計処理にSPSS Statistics 24.0 for Windowsを用いた。研究は新潟大学の倫理審査委員会の承認(2018-0326)を得て行った。
【結果】全調査期間中の解析対象は288人、うちFHME群146例、HH群142例であった。患者背景に有意な差はなかった。HH群で気管支鏡の実施が少なく(30% vs 23%)、人工呼吸管理日数が短くなる(5(2-9) vs 3(2-8))傾向が認められ、再挿管はHH群でやや多くなっていた(5% vs 8%)がいずれも有意な差ではなかった。重症度で層別化して検討したところ、重症例のHH群で人工呼吸管理日数(7(3-11.5) vs 4(2-8))や気管支鏡の実施が減少する(14% vs 8%)傾向があり、人工呼吸管理期間は有意に短くなっていた(p = 0.034)。一方で排痰困難を理由とした再挿管は、軽症例ではHH群で減少し、反対に重症例ではHH群で多くなる傾向が認められた。
【考察】人工呼吸管理の最初よりHHを使用することで気道分泌物の粘稠度を効果的にコントロールでき、確実な加湿で軟化した気道分泌物を通常の吸引操作で容易に除去できるようになったことで、人工呼吸管理期間は短縮、気管支鏡の実施が減少したと思われた。また、重症患者における換気メカニクスの悪化が認められる状況においてはHHの死腔・気道抵抗の減少が有利に働くものの、換気メカニクスが悪化していない軽症例ではその利点が得にくいのではないかと考えられる。一方、排痰困難による再挿管は重症例ではHHの確実な加湿により、気道の清浄化が早期に得られて抜管が早まったものの、抜管後は相対的に加湿が悪化するため気道を清浄な状態に維持できなくなり再挿管が増加したのではないかと考えられた。
【結論】人工呼吸における加温加湿方法としてHHを採用することで、気管支鏡の実施が減少して人工呼吸管理期間が短縮する可能性があり、その効果は重症例で顕著である。
【研究目的】人工呼吸回路の加湿方法変更前後の呼吸管理の実際と患者への影響を検証し、FHMEとHHのどちらが優れた加湿方法といえるのか検討する。
【研究方法】研究デザイン:後方視的前後比較研究
対象患者:2016年10月から2018年9月に救命センターに入室し、侵襲的人工呼吸管理を受けた18歳以上の患者。加湿方法変更前の2016年10月から1年間をFHME群、変更後の2017年10月から1年間をHH群とした。除外対象は48時間以内の積極的治療辞退、低体温療法施行例、熱傷症例、体外循環装置使用例。
データ収集:電子カルテより患者基礎情報(年齢、性別、診断名、主疾患分類、APACHEⅡスコア)。比較指標として人工呼吸管理期間、排痰困難を理由とした再挿管数、吸痰目的の気管支鏡の有無、救命センター内死亡率とし、重症度による違いを検討するためAPACHEⅡスコアの中央値で層別化した。
解析方法:連続変数は中央値と四分位範囲、カテゴリー変数は患者数とパーセントで表記。2群間比較は、Mann-WhitneyのU検定、Fisherの正確検定、同等性の検定を使用。統計学的有意差はp値0.05未満とし、統計処理にSPSS Statistics 24.0 for Windowsを用いた。研究は新潟大学の倫理審査委員会の承認(2018-0326)を得て行った。
【結果】全調査期間中の解析対象は288人、うちFHME群146例、HH群142例であった。患者背景に有意な差はなかった。HH群で気管支鏡の実施が少なく(30% vs 23%)、人工呼吸管理日数が短くなる(5(2-9) vs 3(2-8))傾向が認められ、再挿管はHH群でやや多くなっていた(5% vs 8%)がいずれも有意な差ではなかった。重症度で層別化して検討したところ、重症例のHH群で人工呼吸管理日数(7(3-11.5) vs 4(2-8))や気管支鏡の実施が減少する(14% vs 8%)傾向があり、人工呼吸管理期間は有意に短くなっていた(p = 0.034)。一方で排痰困難を理由とした再挿管は、軽症例ではHH群で減少し、反対に重症例ではHH群で多くなる傾向が認められた。
【考察】人工呼吸管理の最初よりHHを使用することで気道分泌物の粘稠度を効果的にコントロールでき、確実な加湿で軟化した気道分泌物を通常の吸引操作で容易に除去できるようになったことで、人工呼吸管理期間は短縮、気管支鏡の実施が減少したと思われた。また、重症患者における換気メカニクスの悪化が認められる状況においてはHHの死腔・気道抵抗の減少が有利に働くものの、換気メカニクスが悪化していない軽症例ではその利点が得にくいのではないかと考えられる。一方、排痰困難による再挿管は重症例ではHHの確実な加湿により、気道の清浄化が早期に得られて抜管が早まったものの、抜管後は相対的に加湿が悪化するため気道を清浄な状態に維持できなくなり再挿管が増加したのではないかと考えられた。
【結論】人工呼吸における加温加湿方法としてHHを採用することで、気管支鏡の実施が減少して人工呼吸管理期間が短縮する可能性があり、その効果は重症例で顕著である。