第21回日本救急看護学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

終末期ケア

[O23] O23群 終末期ケア

2019年10月5日(土) 13:30 〜 14:10 第8会場 (1F 中会議室102)

座長:谷島 雅子(自治医科大学附属病院 救命救急センター)

[O23-3] 訪問診療終末期患者の救急対応

稗田 貴純, 橋本 昌幸, 遠藤 克則, 佐藤 智子 (赤心堂病院)

【はじめに】

当院は二次救急病院として年間2500台程度の救急搬送を受け入れている一方で、患者本人のリビングウィルを取り入れた訪問診療を行っている。在宅での看取りも業務の一環であるが、家族の心境の変化や有事にkey personが不在である場合などから救急車を要請するケースもみられる。今回我々は、在宅診療を行っていた筋萎縮性側索硬化症(以下ALS)の呼吸停止による救急搬送症例を経験したので、若干の文献的考察を加え報告する。

【症例】

2年前にALSと診断され訪問診療を行っていた86歳の男性が、呼吸停止し救急要請となった。当時key personである娘は外出しており、認知症のある妻が取り乱して救急要請した。救急隊接触時は心肺停止で初期波形はPEAであった。救急隊はDNRの書類を確認できたが妻が混乱していたため、特定行為を行わず胸骨圧迫のみで救急搬送することを決定した。来院時は心拍再開していたが呼吸は停止したままであった。妻と相談のうえ挿管・人工呼吸器を装着することで状態の安定化が図れた。入院後の精査で心停止に至る新たな病変は指摘できす、現病による呼吸停止が心停止の原因と診断した。

【考察】

DNRの方針となっている患者の救急搬送症例を経験しその対応の難しさを経験した。原因として、救急搬送となった日時が休日であったこと、key personが不在であったこと、key person以外の家族が蘇生を希望したことが挙げられる。後日やはり蘇生治療を行わない方がよかったという意見も家族内から聞かれたが、医療安全の観点からkey person以外の家族であっても治療を希望した場合は蘇生行為を行うことは妥当であると考えられる。救急隊は心肺停止の患者に接触した場合、DNRの書類があっても蘇生行為を行いながら搬送しなければならない。北出らは事前にDNRが確認されていても約7割が病院に搬送されたと報告している。また、真弓らは心肺停止患者の12.9%が終末期または終末期類似状態であったと報告しており、本症例のような救急対応は決して珍しいものではないと考えられる。

【結語】

これまでの治療方針が急に変更になる場合があり、救急医療と訪問医療の連携が重要であると考えられた。