第21回日本救急看護学会学術集会

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一般演題(口演)

チーム医療

[O24] O24群 チーム医療①

Sat. Oct 5, 2019 2:20 PM - 3:20 PM 第8会場 (1F 中会議室102)

座長:直井 みつえ(済生会宇都宮病院 栃木県救命救急センター)

[O24-4] Hybrid Emergency Roomにおける診療方針共有の効果~戦略宣言の導入~

佐藤 真矢, 阪口 理恵, 松本 昌子, 松本 奈々, 下池田 百合, 澤井 朋子 (地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪急性期・総合医療センター 救急病棟)

【はじめに】
2011年8月、当センターの初療室にIVR-CTが設置され、Hybrid Emergency Room(以下Hybrid ER)の運用が開始された。Hybrid ERでは、患者を移動することなく同一寝台にて、CT検査による診断や動脈塞栓術(以下TAE)、緊急手術が可能である。その結果、治療開始までの時間が大幅に短縮し、迅速な検査や手術準備を求められるようになった。しかし、診療方針を共有する機会がなく、CT検査や手術準備に時間を要することもあった。そこで、搬入からCT検査開始までとCT検査終了から止血術完了までの2段階で診療方針を明言する戦略宣言を導入した。そして、骨盤外傷症例と頭部外傷症例には、指示を包括した緊急宣言をそれぞれ導入した。
【目的】
Hybrid ERにおける戦略宣言導入の効果を検証すること
【方法】
1.対象期間:2013年2月から2019年3月
2.対象:救命救急センターに搬入された外傷症例2595例のうち、Hybrid ERで緊急手術が必要となった骨盤外傷17症例と頭部外傷80症例。骨盤外傷は、腹膜前パッキング及びTAEが施行された症例とした。来院時心停止症例と転院症例は除外した。
3.調査方法:電子カルテより、搬入からCT検査開始までの時間、搬入から緊急手術開始までの時間、CT検査終了から緊急手術開始までの時間を調査し、2016年11月の導入前後において比較した。統計学的解析には、Mann-Whitney検定を用いた。
【倫理的配慮】
院内の倫理審査委員会の承認を得た。また、調査したデータはコード化し、個人が特定されないように配慮した。
【結果】
骨盤外傷症例は、戦略宣言導入前のA群が8例、導入後のB群が9例であった。頭部外傷症例は、A群が49例、B群が31例であった。CT検査開始までの時間は、骨盤外傷症例、頭部外傷症例ともに有意な差を認めなかったが短い傾向にあった [骨盤外傷:A群10.5(7.75‐19.25)分vs .B群7.5(4.5‐12)分,p=0.241、 頭部外傷:A群10(7.5‐18)分vs .B群8(6‐13.5)分,p=0.059]。搬入から緊急手術開始までの時間は、B群で短縮され有意差を認めた[骨盤外傷:A群46.5(33.25‐54)分vs. B群25(24‐31)分,p=0.023、頭部外傷:A群45(36‐54.75)分vs .B群30(25.5‐37.5)分,p<0.001]。また、CT検査終了から緊急手術開始までの時間もB群で短縮され、有意な差を認めた[骨盤外傷:A群25(14.5‐33.5)分vs. B群7.5(6-10.25)分,p=0.010、頭部外傷:A群23(17‐34)分vs .B群13(11‐21.75)分,p=0.001]。
【考察】
戦略宣言の導入は、放射線技師や薬剤師を含めた多職種で診療方針を共有する機会となった。そして、Hybrid ERにおける外傷初期診療で、多職種が各役割を明確化することにも繋がった。その結果、共通認識を持った上で外傷初期診療に携わることが可能となり、CT検査や緊急手術の開始時間を短縮することができたと考えられる。また、必要物品や術前処置などの指示を包括し可視化することで標準的な準備も可能となり、CT検査終了後から緊急手術開始までの時間を早めることができたと考える。
【結語】
戦略宣言の導入は、Hybrid ERでの外傷初期診療において各職種の役割を明確化することに繋がり、CT検査や緊急手術開始までの時間短縮に有用であることが示唆された。