第21回日本救急看護学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

チーム医療

[O25] O25群 チーム医療②

2019年10月5日(土) 15:20 〜 16:20 第8会場 (1F 中会議室102)

座長:小笠原 美奈(秋田赤十字病院)

[O25-5] A病院ER-ICUにおける医師・看護師の倫理に関する認識

平井 美恵子1, 齋藤 和憲1, 田中 真琴2 (1.東京医科歯科大学医学部附属病院 救命救急センター, 2.東京医科歯科大学大学院 保険衛生学研究科)

【はじめに】A病院ER-ICUでは、2012年に看護師の倫理チームを発足し、看護スタッフが普段感じている倫理的問題を表出する機会として倫理カンファレンスを開催してきた。その中で、患者や医師からの情報が不足しており、患者自身の意思が確認できないが故に、治療内容や患者のQOLに関連し「医師と看護師間で認識にずれが生じている」という意見が複数あった。患者中心の医療、患者にとって最善の医療を提供するためには、医師・看護師が倫理に関して互いにどのような認識があるかを知り、連携・協働することが重要であると考える。

【目的】倫理的問題への対処・行動につなげるため、チーム医療の担い手である医師・看護師が持つ倫理に関する認識を明らかにすることを目的とした。

【方法】2018年〜2019年3月31日までにA病院救急科に所属する医師、ER-ICUに所属する看護師にインタビューを実施した。調査内容は「倫理について」「チーム医療」「医師・看護師の協働・連携」とし、医局長より推薦され同意の得られた医師5名、2017年ラダーⅠ〜Ⅴから各2名の同意の得られた看護師10名に一人あたり1回30分程度の半構成面接を実施した。逐語録を作成し、「倫理に関する認識」について抽出し、カテゴリー分類を行った。

【倫理的配慮】所属施設の倫理審査委員会の承認を得た。

【結果】「倫理に関する認識」について、以下、[カテゴリ]《サブカテゴリ》<コード>を用いて示す。[倫理についての思いやイメージ][倫理は人によって異なる][救急の倫理的問題と感じること][倫理的価値観に基づく行い]の4つのカテゴリーに分類された。《倫理は難しく》、《職種間や患者・家族によって異なる》と医師・看護師ともに認識していた。医師は《生死に関わる場面》、看護師は《意思決定や治療方針に関するプロセス》《救命・治療が優先される》ことに倫理的問題を多く感じていた。このような問題に対し医師は<患者の訴えを聞く><医学的な常識を示す>、<看護師にも考えを伝えている>と認識していた。看護師は、《患者の思いを考えケア》し、《プロとしての姿勢・態度を意識し》、《気づいたことや思ったことを医療者に伝える》と認識していた。

【考察】看護師は意思決定や治療方針に対し倫理的問題を感じていた。これは、以前の倫理カンファレンスであがった意見と一致する。救急医療において、救命は第一義であり、医師は<救命に全力を尽くすこと>に重きを置いていた。そのため、救命・治療が優先されやすく、患者が意思表示できない、時間的猶予がないために意思決定プロセスにおいても医療者主体となりやすい。医師は、患者の訴えを聞く、看護師へ伝えるなど医師主体にならないよう治療方針を決定していた。看護師は、救命の先にある社会復帰、患者のQOLを見据えて《患者の思いを考えケア》していると思われる。意思表示できない患者を前に、医師や患者・家族間で異なる価値観を感じていると考える。治療の短期的目標である救命とケアの長期的目標である患者のQOLの違いが、医師・看護師の認識にずれを生じている要因であると考える。倫理的ジレンマ解決の第一歩は、感じているジレンマを声に出して他者に伝えることである。医師は看護師に、看護師は医療者に、伝えていると認識しており、倫理的問題の発信者となると考える。今回の研究では、他者にどのように伝わっているかは明らかになっていない。倫理的問題解決のための方策については今後の課題である。