第21回日本救急看護学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

看護体制

[O26] O26群 看護体制

2019年10月5日(土) 09:00 〜 09:50 第9会場 (1F 中会議室103)

座長:合原 則隆(久留米大学病院 高度救命救急センター)

[O26-2] 緊急内視鏡が必要な吐下血救急患者の受け入れ体制の構築と課題

檍 あず紗 (清智会記念病院)

【目的】

当院は都内にある2次救急指定病院である。東京都では年間約69万人が救急搬送されており、そのうち受入先の医療機関がスムーズに決まらず、搬送困難になる事例も約6600件程度発生している。当院近隣での選定困難例の多くは、緊急内視鏡を検討する事例であると問題視された。そのことを受け、当院は救急患者の受け入れ体制の整備を行ない、緊急内視鏡を検討とする吐下血救急患者の積極的な受け入れを行うこととなった。

【倫理的配慮】

 事業の実施については、当院の倫理委員会で承認されており、収集されたデータは厳重に管理する。

【背景、方法】

当院における時間外勤務の体制は、内視鏡部門に勤務する看護師、薬剤師、検査科は常時しておらず、当直医は2人体制であり、専門科はその日によって異なる体制である。消化器内科医の常勤医も少ないため、時間外における積極的な緊急内視鏡の対応は行っていなかった。しかし、当院近隣での選定困難事例は、緊急内視鏡を検討する事例であることを知り、消化器内科医と救急外来看護師を中心に、緊急内視鏡を検討する吐下血救急患者の受け入れ体制の整備を行うこととなった。

当初看護師や医師から、患者の重症度評価および内視鏡的止血術の適応について判断が困難であるといった意見が多く聞かれた。そのため、消化器内科医を中心に、内視鏡治療適応の予測スコアとして、Glasgow-Blatchford scoreやAIMS65 score を参考にshock indexとHb値を元に当院独自のフローチャートを作成し、医師や看護師への周知を図った。吐下血救急患者の緊急度・重症度の判断においては、看護師の経験や知識など個人の能力に差があり、統一性がなく、対応の遅れにつながるリスクを予測し、緊急度・重症度判定基準を作成、導入を行った。さらに、吐下血救急患者に関連する勉強会を開催するなどの取組みも行った。ほかにも、24時間緊急内視鏡にも対応できるよう、消化器内科医・薬剤師・検査科の24時間オンコール体制の確立や、安全面を確保するため当院では対応できない重症救急患者への対応に備え、近隣救命センターにも協力連携依頼も行った。時間外の緊急内視鏡対応は、救急外来看護師が対応しなくてはならないため、消化器内科医や内視鏡看護師より内視鏡止血術方法など具体的に指導を受け、実践訓練を実施した。内視鏡部門に勤務する看護師は、緊急内視鏡がすぐに実施できるよう、業務終了時には内視鏡機械の準備を徹底することを取り決めとした。

【結果】

当院取り組みや方法から、平成29年4月より救急隊待機室に緊急内視鏡可能日の掲示を開始し、近隣救急隊へ情報提供を図った。また、同年10月より東京都の調整困難患者(吐下血)受け入れ機関支援事業に参加することとなり、吐下血救急患者の受け入れ要請件数と、応需件数は増加した。

【考察】
当初は医師や看護師からも安全面の確保が難しいと、反対意見も多かったが、受け入れ体制の整備と一定の基準を作ることで、吐下血救急患者の応需件数を増加させ、地域貢献に繋がることが示唆された。今後は高齢化に伴い、救急医療に対する需要の増大や複数の疾病を有する患者に対し、需要に見合う受入体制の確保が求められると推測する。そのため、様々な知識を統合して看護を提供する能力や、看護の質の向上に向けた教育体制の構築、業務体制の見直し・検討といった取り組みも重要であると考える。