[O26-5] 入院した二次救急患者の外来滞在中の活動に関する看護師の臨床判断プロセス
【目的】入院した二次救急患者の外来滞在中の活動に関する看護師の臨床判断プロセスを明らかにする。
【方法】救急外来受診後に入院となった二次救急患者を担当したことのある救急領域経験3年目以上の看護師を対象に、半構造化面接を行い、修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを参考に継続比較分析を行った。
【概念の定義】活動とは、自動他動を問わず患者が身体を動かすこと。臨床判断とは、気づきや直観に基づいた状況予測から患者状態を把握・解釈し、何かしらの行為を取るのか取らないのかを選択し、実施の評価を行うこと。その判断に影響を与える要因を含めた一連の過程を臨床判断プロセスとした。
【倫理的配慮】研究者在学施設の人に関する研究倫理審査委員会の承認(H2017-5-2)後、対象施設・本人の承諾を得て実施した。
【結果】研究参加者は、救急外来に勤務する看護師21名で、看護師経験年数は平均12.9年、救急領域経験年数は平均6.2年であった。135個の概念から63個のサブカテゴリー、24個のカテゴリーが生成され、さらに8個の局面が抽出された。≪ ≫は局面を示す。分析の結果、看護師は、患者受診前の段階から≪事前情報と印象からの直観的危険予測≫を開始していた。そして、情報をもとに≪救命優先の安静継続手段の選択≫までを行い、患者の受け入れ準備を整えていた。一方で、患者対面と同時に≪活動可否判断のための状態把握・解釈≫を行い、活動可能と判断した場合は≪安全・安楽な活動拡大のための手段選択と評価の繰り返し≫を継続し、活動拡大に繋げるという活動に関する臨床判断をしていた。その過程において≪判断の必要性を感じるがゆえ生じる感情との向き合い≫をしながら≪医師とのタイムリーな連携≫をどのように取っていけるかが判断に影響を与えていた。その背景には≪救急外来での活動判断実施の基底≫が存在し、自身の判断と行為に対し≪次回類似状況判断に繋げるための振り返り≫を行うことで、活動に関する臨床判断プロセスが成り立っていた。
【考察】入院した二次救急患者の外来滞在中の活動に関する看護師の臨床判断は、確定診断前の不確かな状況の中、患者の認知力やADL情報も加味して安静継続か段階的活動拡大かを選択する、安全を基軸とした臨床判断であった。そして、判断に影響を与える要因が常に存在することで、患者の活動に関する臨床判断プロセスが成り立っていた。
看護師が安全を基軸とした活動判断を行うのは、患者が単に動けるかだけでなく、その先の行為が安全・安楽に行えるかまで見越して、活動可否の決定や活動手段の選択をするためであると推測される。その結果、確定診断前の不安定な救急患者の症状悪化を回避するための適切な活動判断が行われていたと考える。しかし、受け入れ準備の段階では、不確かな事前情報をもとに手段まで選択していることを認識し、状態に応じて手段を変更できる柔軟性を持たなければ、患者の自立が無視された過度な安静継続に繋がる危険性がある。そのため、疾患の知識を身につける学習はもちろん、経験知による判断の差異を回避するために、医師を含む医療者間の連携体制の充実を図ることが必要である。また、症例から得た学びを医療チーム全体で振り返り共有することが、組織全体の患者の活動に関する臨床判断の質を向上することに繋がると考える。
なお、本研究発表は関東学院大学大学院修士課程において修士論文としてまとめた内容の一部を報告するものである。
【方法】救急外来受診後に入院となった二次救急患者を担当したことのある救急領域経験3年目以上の看護師を対象に、半構造化面接を行い、修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを参考に継続比較分析を行った。
【概念の定義】活動とは、自動他動を問わず患者が身体を動かすこと。臨床判断とは、気づきや直観に基づいた状況予測から患者状態を把握・解釈し、何かしらの行為を取るのか取らないのかを選択し、実施の評価を行うこと。その判断に影響を与える要因を含めた一連の過程を臨床判断プロセスとした。
【倫理的配慮】研究者在学施設の人に関する研究倫理審査委員会の承認(H2017-5-2)後、対象施設・本人の承諾を得て実施した。
【結果】研究参加者は、救急外来に勤務する看護師21名で、看護師経験年数は平均12.9年、救急領域経験年数は平均6.2年であった。135個の概念から63個のサブカテゴリー、24個のカテゴリーが生成され、さらに8個の局面が抽出された。≪ ≫は局面を示す。分析の結果、看護師は、患者受診前の段階から≪事前情報と印象からの直観的危険予測≫を開始していた。そして、情報をもとに≪救命優先の安静継続手段の選択≫までを行い、患者の受け入れ準備を整えていた。一方で、患者対面と同時に≪活動可否判断のための状態把握・解釈≫を行い、活動可能と判断した場合は≪安全・安楽な活動拡大のための手段選択と評価の繰り返し≫を継続し、活動拡大に繋げるという活動に関する臨床判断をしていた。その過程において≪判断の必要性を感じるがゆえ生じる感情との向き合い≫をしながら≪医師とのタイムリーな連携≫をどのように取っていけるかが判断に影響を与えていた。その背景には≪救急外来での活動判断実施の基底≫が存在し、自身の判断と行為に対し≪次回類似状況判断に繋げるための振り返り≫を行うことで、活動に関する臨床判断プロセスが成り立っていた。
【考察】入院した二次救急患者の外来滞在中の活動に関する看護師の臨床判断は、確定診断前の不確かな状況の中、患者の認知力やADL情報も加味して安静継続か段階的活動拡大かを選択する、安全を基軸とした臨床判断であった。そして、判断に影響を与える要因が常に存在することで、患者の活動に関する臨床判断プロセスが成り立っていた。
看護師が安全を基軸とした活動判断を行うのは、患者が単に動けるかだけでなく、その先の行為が安全・安楽に行えるかまで見越して、活動可否の決定や活動手段の選択をするためであると推測される。その結果、確定診断前の不安定な救急患者の症状悪化を回避するための適切な活動判断が行われていたと考える。しかし、受け入れ準備の段階では、不確かな事前情報をもとに手段まで選択していることを認識し、状態に応じて手段を変更できる柔軟性を持たなければ、患者の自立が無視された過度な安静継続に繋がる危険性がある。そのため、疾患の知識を身につける学習はもちろん、経験知による判断の差異を回避するために、医師を含む医療者間の連携体制の充実を図ることが必要である。また、症例から得た学びを医療チーム全体で振り返り共有することが、組織全体の患者の活動に関する臨床判断の質を向上することに繋がると考える。
なお、本研究発表は関東学院大学大学院修士課程において修士論文としてまとめた内容の一部を報告するものである。