第21回日本救急看護学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

地域連携

[O28] O28群 地域連携

2019年10月5日(土) 11:10 〜 11:50 第9会場 (1F 中会議室103)

座長:町田 真弓(前橋赤十字病院)

[O28-2] 24時間以内に救急外来を再受診した患者の実態

村松 武明 (聖隷三方原病院 高度救命救急センター)

【はじめに】

A病院の救急外来(以下ER)は、1次から3次までの患者に対応している。2018年度の救急車来院は5768名であり、帰宅する患者は2700名であった。帰宅患者の中には、様々な理由で十分な生活環境が整っていない可能性があり、A病院では、帰宅後の医療や介護支援が必要と思われる患者を看護相談室と連携し地域につなげている。2018年度は196件を看護相談室と連携している一方で、救急車でERに初回受診(以下初診)し、帰宅した患者の中で24時間以内に再受診(以下再診)となった症例が15件発生している。現状の看護相談との連携は、個々の看護師判断に一任されている。今回、再診となった15件の実態を調査し、確実に帰宅後の支援ができる体制の構築に向け課題を検討する。

【目的】

 A病院において、救急車で初診し24時間以内にERを再診した帰宅患者の実態を明らかにする。

【方法】

<対象>

 救急車でERに初診し帰宅した患者の中で24時間以内に再診となった15症例。

<データ分析方法>

 初診と再診時における診療録から取得し、年齢・性別・再診形態・転帰・主訴・バイタルサイン・家族構成・ADL・介護認定毎に整理したデータから内容を分析する。なお、A病院における倫理委員会の承認を得た(研究番号第19-11)。

【結果】

 平均年齢52.7歳で小児4名、成人11名、男性8名、女性7名であった。再診形態は救急車来院11件、自己来院4件、転帰は入院が10件で一般病棟9件とICU1件であった。主訴は小児4件が全て痙攣、成人11件で呼吸苦・眩暈2件、動悸・排尿困難・血尿・嘔吐下痢・発熱・頭痛・鼻出血が1件であり、呼吸苦と血尿と発熱は、初診から再診で主訴変化を認めた。また、バイタルサインは13件で初診と再診で変動ないが、発熱はICU入室、呼吸苦1件は重度心疾患で治療選択せず死亡であった。

 家族構成のうち、小児は全て核家族、成人は独居4件、配偶者のみ1件、二世代2件、施設入所2件、不明1件、ADLは部分介助1件、全介助1件、自立9件、介護認定は要介護2件、なし9件であった。

 記録のうち、診療記録は全て病状説明と病状増悪する可能性や増悪時の再診指導をしており、小児は強調していた。一方、看護記録において、小児は初診と再診ともに診療記録のみ、成人は全てに記録あり、初診と再診でバイタルサインや症状変化、処置内容の記載であったが、初診後の電話のフォロー2件、再診で家族構成、介護状況、キーパーソンや支援の程度など外来との連携が1件あった。

【考察】

 小児では全て到着時に痙攣が消失し、状態も安定していた。A病院のERでは、状態が安定している場合、小児専用の診察室で診察することが多い。医師のみで対応する傾向があり、円滑な医師との情報共有が滞りやすいことが推測される。成人では検査や治療の補助、症状ケアなどを重視する傾向が強くある中で、帰宅後に生活する上で独居であっても自立されていることや要介助であっても家族の存在があることで生活が可能であると看護師独自の判断していることが推測される。一方で初診後、電話フォローや再診後の外来との連携は、医学的判断、患者の意向をもとに、患者の個別的な生活背景を把握し、医師、看護師、患者と情報共有して対応している。このことから、救急車来院で帰宅するということは、帰宅支援が必要なキーワードになる。しかし、救急車来院では多数の帰宅患者がいること、ERでは多くの看護実践が必要な中、全てキーワードとして拾い上げは困難である。そのため症例以外の帰宅患者についても調査し、確実に拾い上げられる体制構築が課題と考える。