第21回日本救急看護学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

トリアージ

[O30] O30群 トリアージ④

2019年10月5日(土) 14:20 〜 15:20 第9会場 (1F 中会議室103)

座長:西尾 宗高(杏林大学医学部付属病院)

[O30-1] 小児専門病院におけるトリアージの課題 -トリアージの質向上にむけた事後検証結果からの考察-

秋葉 美穂, 三浦 奈津美 (埼玉県立小児医療センター)

はじめに

 A病院は、小児専門の3次医療機関であり、救急外来では日本版救急患者緊急度判定支援システム(以下JTASとする)によるトリアージを実施している。基礎疾患や先天性疾患をもつ小児が多く受診する中で、JTASを使用して適切な緊急度の決定をする上での課題があるのではないかと考えた。



Ⅰ 目的

 A病院の救急外来で実施しているJTASを用いた緊急度判定における課題を明らかにする。



Ⅱ 方法

1.調査期間 

 2018年4月~2018年9月

2.対象

 看護師が実施したトリアージ、600件

3.データ収集方法・分析方法

 事後検証結果からアンダートリアージ(以下UTとする)を抽出する。UTの理由をカテゴリー毎に分類し内容について考察する。

4.倫理的配慮

 所属機関の倫理委員会の承認を得て実施。



Ⅲ 結果

 トリアージ件数とUTをカテゴリー毎に分類したものを表1に記載した。                    



Ⅳ 考察

 選択した主訴から補足因子を活用できなかったものは、脱水に関するものが多くを占めた。JTASでは、発熱、嘔吐、下痢を主訴とした場合に脱水の項目が参照できるが、小児の特徴から、その他の主訴を選択した場合も、常に考慮を必要とすることが示唆された。

 JTASの自動判定で適切に緊急度を判断できなかったものは、先天性疾患の頻脈であった。平時は徐脈のある小児で、JTASの自動判定では本人にとっての頻脈が正常と判定されたが、代償性ショックを起こしていた。先天性疾患や基礎疾患では、普段の状態が小児により異なる。家族からの情報を緊急度判定の材料とすることは、A病院のトリアージにおいて重要である。そして、緊急度判断の際の独自の基準を決定しておくことも重要であると考えた。

 さらに、緊急度を下げたことによるものは、見た目の具合が良さそうという理由でJTASによる自動判定の緊急度から変更していたものであった。小児は予備力が少なく安易な緊急度の変更は避けるべきであり、トリアージナースに対する教育体制充実の必要性が示唆された。残りの2つのカテゴリーについても、トリアージでのJTASの使用方法や情報収集について、教育の必要性が示唆された。



結論

1)選択した主訴により補足因子を活用できずUTとなる可能性が明らかとなった。

2)先天性疾患や基礎疾患の場合、JTASに独自の判断基準を加える必要性が示唆された。

3)A病院におけるトリアージナースへの教育の充実の必要性が示唆された。



おわりに
 事後検証は一部であり更なる課題があると考える。今後も継続することが重要である。
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