第21回日本救急看護学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

トリアージ

[O31] O31群 トリアージ⑤

2019年10月5日(土) 15:20 〜 16:20 第9会場 (1F 中会議室103)

座長:松﨑 八千代(筑波メディカルセンター病院)

[O31-1] トリアージシステム変更に伴う現状報告と見えてきた課題

岩本 昌規, 外山 和加子, 桐田 千香子, 神谷 陽子, 落合 裕子 (中東遠総合医療センター)

【目的】
 A総合医療センターは、2018年4月から新たに院内トリアージシステムとしてJapan Triage and Acuity Scale(以下JTAS)の導入を行った。JTAS導入前は、独自の判定基準を用いた3段階評価でトリアージ判定の妥当率を算出していた。今回、5段階評価であるJTAS導入後のトリアージ判定の現状分析と、妥当率の算出、新たな課題の抽出を行うことを目的とし本研究に取り組んだ。
【方法】
調査期間:2018年4月1日〜9月30日、A総合医療センターの救急外来に救急車以外で来院した患者6912名。方法は、ウォークインの患者情報(ID・来院日時・トリアージ時間・緊急度判定の緊急度・転帰・一次評価・二次評価・トリアージ件数)について、EXCELを用いてデータ化し、JTAS導入後の現状分析と妥当率の推移を算出した。倫理的配慮について、本研究は個人の特定が出来ないよう暗号化し個人情報の保護を行うと共に、対象施設の臨床研究倫理委員会の承認を得た上で行った。
【結果】
調査期間中の総トリアージ件数は、6912件で全体の妥当率は97.2%となった。また、JTASの5段階評価の内訳として、青は0.15%、赤は3.56%、黄は35.1%、緑は57.2%、白は2.8%であった。特に緊急度の高い青判定は、赤判定と比べて統計的に有意な差は認められなかった。
【考察】
全体の妥当率に関しては、概ね良いと評価できるが、トリアージシートなしや評価不明の分も含まれることに注意が必要である。また当院の現在の評価基準では、トリアージ判定のずれが1段階生じても妥当と判定することになっている。そのため、シートなしや評価不明の分を加味しても平均で毎月約95%前後がトリアージ妥当と評価されることとなる。つまり100人に約5人は妥当以外の評価となってしまうことになる。繁忙時には、トリアージの判定ドリフト現象が起こりやすいことが知られている。今回の調査においては、どのような主訴や疾患でそのようなことが起こりやすいのか、その他関連する因子などの分析は出来ておらず、現時点では不明と評価せざるを得ない。また、中でも診療の即時介入が必要となる青判定は0.15%と非常に低いが、統計的に赤と比べても有意な差を認めなかった(P値0.61)。全体で97.2%が妥当という判定に繋がったことについては、各トリアージレベルを判定する判断指標となるJTASの存在が挙げられる。トリアージ看護師は判定後にiPADを用いて、自身のトリアージ判定の振り返りが出来るようになったことや、日々のトリアージ事例の振り返り、救急医を交えたトリアージ症例の事後検証会なども効果があったと推察する。それらの学習や経験を駆使しながら、それぞれの看護師がトリアージを行っていくことで、全体として概ね良いトリアージ判定に繋がったと考えられる。
今後は、トリアージ評価基準の見直しを行うと共に、妥当性の精度向上や、弱点の抽出などを行っていくことが望まれる。それらの解決に向けて、アンダートリアージや評価不明の部分の原因をきちんと集積していくことが必要である。また疑いを含む病名以外に、最終受け入れ科の記載や、トリアージ判定をした看護師が関わった全ての事例の分析をしていくことなども必要となる。そのため、現在のデータ収集方法に加えて、最終受け入れ科の追加や、評価不明、トリアージシートなしをできる限り無くしていくための仕組み作りなどが急務となる。