第21回日本救急看護学会学術集会

講演情報

一般演題(口演)

医療安全

[O7] O7群 医療安全

2019年10月4日(金) 10:30 〜 11:20 第8会場 (1F 中会議室102)

座長:杉本 環(日本大学医学部附属板橋病院)

[O7-5] 成人患者におけるエコーガイド下(ランドマーク法)末梢静脈路確保の有用性

山本 泰大 (岐阜県立下呂温泉病院)

【目的】エコーガイド下での末梢血管確保が、従来の経験則に基づく末梢血管確保よりも確実性が高いかを検証した。【方法】60歳以上の救急、外来受診患者、CT目的で来院した者を対象とし、従来通りの血管確保を行った50名を対照群、エコーガイド下での血管確保を行った80名を介入群とした。調査期間は2017年8月~2018年3月とした。調査方法は対照群が当院基準手順委員会作成の末梢静脈路確保の手技に準拠し実施し、介入群の手技方法はエコーによる血管の検索後、留置可能と判断された血管に対してマーキングを行い、それをランドマークに当院の基準手順書に準じ末梢血管確保を行った。調査内容は年齢、性別、血管の目視、触知の可否、上肢の冷感の有無、血管確保後の輸液滴下での疼痛の有無、血管確保後の輸液滴下不良の有無とした。分析方法は対照群と介入群の血管確保の成功率を比率の差の検定を用いて比較、調査内容についてχ検定およびFisherの正確確率検定を用いて対照群と介入群の比較を行った。すべて有意水準5%とした。【倫理的配慮】本研究は、A病院看護研究委員会の承諾を得て実施した。【結果】血管確保成功率は留置後に逆血を認めたものを成功と判断し、成功率は、対照群が88%(50名中44名)に対し、介入群が98.8%(80名中79名)と高く、有意差がみとめられた(χ2=6.98, p<0.01)。調査項目の比較は輸液を開始後、滴下良好であった症例は対照群が86%(43名)、介入群98.8%(79名)、で、両群の滴下の良否に有意差がみとめられた(p<0.01)。選択血管のうち目視可能であった症例は対照群が90%(45名)、介入群が91.3%(73名)、選択血管のうち触知可能な症例は対照群が100%、介入群が95%(76名)であり、いずれも有意差は認められなかった。さらに、冷感の有無では、冷感が無かった症例は対照群が92%(46名)、介入群が93.8%(75名)であり、穿刺後の疼痛を認めなった症例は対照群が98%(49名)、介入群が100%で、これらについても有意差はみとめられなかった。対照群における血管確保の可否で調査項目を比較したところ、血管部位に有意差が認められた。血管確保成功症例では正中59.1%、尺側25.0%、橈側15.9%であったのに対し、結果確保失敗症例では、正中0%、尺側16.7%、橈側83.3%で、橈側で血管確保が出来なかった割合が有意に多かった(p<0.001)【考察】静脈路確保の成功率と確保後の輸液の滴下の良否において、介入群が良好な成績であることが明らかとなった。両群の背景に差は見られなかったことから、エコーガイド下での静脈路確保は有用であるといえる。また、今後どのような場合にエコーを用いるかの検討が必要となるため対照群において血管確保成功群と失敗群を比較し、従来の手技では困難な要素を確認した。血管選択において、橈側選択時の成功率が尺側、正中の成功よりも有意に低値となった。正中、尺側への穿刺は解剖生理的に神経損傷のリスクが高く、すべての位置を同定する事は困難である。対照群では橈側の成功率が低値となったが、合併症を考慮すると橈側での穿刺は選択肢から外せず、成功率を上げる担保としてエコーガイド下での穿刺を行う事で不必要な高リスク部位への穿刺を回避させ、合併症の予防ができると考えられる。以上、静脈路確保時のエコーの有用性については確認できたが、機器の操作、画像から最適な血管を選択し血管走行と自身のイメージを融合して穿刺を実施するのは修練が必要であると考える。