第21回日本救急看護学会学術集会

講演情報

パネルディスカッション

[PD2] 緊急度・重症度判定の力を日常ケアに活かす

2019年10月4日(金) 15:20 〜 17:20 第3会場 (2F 中会議室201)

座長:横田 由佳(杏林大学医学部付属病院 看護師長), 芝田 里花(日本赤十字社和歌山医療センター)

[PD2-2] 「家に居たい」を支える、在宅ケアチームが実践している緊急度・重症度判定

平山 司樹 (高知厚生病院 訪問看護ステーション こうせい)

在宅の現場は、24時間365日、医療・介護職が滞在しているわけではない。そのため、予防と予測が重要なケアの1つとなっている。
 ある心不全の在宅療養者(NYHA分類Ⅱ度)の1週間の生活をイメージすると、訪問看護師や在宅医、セラピスト等の医療職が療養者・家族と接する時間はほんの数時間(1日0~2時間未満)程度である。在宅に従事する医療・介護職は、病院と違い1日のうちの数分から数時間といった点でしか療養者・家族と接することができないのである。そのような現場で、基礎教育が異なる専門職同士が協働し、また療養者及び家族への教育によって、点である関わりを、いかに線に近づけ、切れ目のないケアを提供できる環境をつくる事は重要なことである。
 平成29年度人生の最終段階における医療に関する意識調査結果(厚生労働省ホームページより)では、末期がんと診断され状態は悪化し、今は食事がとりにくく呼吸が苦しいが、痛みはなく、意識や判断力は健康な時と同様に保たれている場合。及び、慢性の重い心臓病が進行して悪化し、今は食事や着替え、トイレなど身の回りのことに手助けが必要だが、意識や判断力は健康な時と同様に保たれている場合において、約70%の一般国民(医療・介護職は65%以上)は住み慣れた自宅で最期を迎えたいと答えている。しかし、多くの場合、最期は病院で迎えている。その理由の一つに、急変時の不安がある。すべてのことを予測し伝えることは難しいが、病期やフィジカルアセスメントにより、ある程度の症状出現のリスクや症状の原因、予後等の予測は可能である。療養者や家族へ予測を伝え、療養者・家族の準備性を高めることで、状態の変化に対応する力を養ってもらうことも必要ではないかと考える。これは、療養者・家族の後悔を少なくすることにつながり、アドバンス・ケア・プランニング(ACP)として話し合うことの重症性も高まってきている。
 在宅の現場は、医師や看護師以外に、セラピストや薬剤師等も自宅に訪問しケアを行っている。訪問時には緊急度・重症度の判断を強いられることもある。しかし、基礎教育でフィジカルアセスメント等の緊急度・重症度の判断を学んでいない専門職にとっては、そのような判断が困難となることもある。また知識不足のために、不必要な緊急訪問や救急搬送となっているケースも少なくない。そこで、看護という専門職だけではなく、在宅医療に従事するセラピストや薬剤師等と協働し、在宅コメディカルの会を立ち上げ、それぞれの専門職の課題を共有することとした。第一段階として、救急のスペシャリストではなく、ジェネラリストができる在宅での緊急度・重症度の判断のためのフィジカルアセスメントと臨床推論、電話報告の方法、ACPについての研修会を企画し、『1人のスペシャリストより、100人のジェネラリスト』の育成を行っている。