第21回日本救急看護学会学術集会

講演情報

パネルディスカッション

[PD5] 救急医療におけるタスクシフト~新たな力の創造~

2019年10月5日(土) 14:40 〜 16:30 第3会場 (2F 中会議室201)

座長:山勢 博彰(山口大学大学院医学系研究科), 芝田 里花(日本赤十字社和歌山医療センター)

[PD5-3] 看護管理者の視点から考える特定医行為の導入について

平野 美佐子 (千葉県救急医療センター)

平成27年より特定行為に関する看護師の研修制度が開始された。10万人以上の養成を目指し開始されたが、平成30年9月末時点で1,205名(延人数10,836人)の養成に止まっている。しかし、労働基準法が改正され、実質的に上限のなかった時間外労働について上限が定められ(医師については令和6年3月31日までは上限規制の適用が猶予)、働き方改革が医療の現場で注視されるようになってきている状況の中、タスクシフトの観点からも再びこの特定行為が注目されている。次年度より新たな認定看護師制度が開始となり、この中にも特定行為研修が組み込まれることとなった。そのため、認定看護師の教育を受けたものは特定行為研修も修了したこととなる。看護管理者としては、そのような看護師をどのように活用し、特定行為導入をどのように考えるかが重要となる。
 千葉県には6つの県立病院がある。県立病院は主に高度専門的な医療を担っており、当院はその一つで独立型の高度救命救急センターとなっている。その他に、がんセンター、精神科医療センター、こども病院、循環器病センター、地域中核病院である佐原病院がある。県では専門的な医療を担う病院として看護師の教育支援に努め、認定看護師・専門看護師の育成を行ってきた。県立病院全体としては、認定看護師56名、専門看護師11名がいる。しかし、特定行為研修を終了しているものは1名となっている。その看護師は皮膚・排泄ケア認定看護師であり、循環器病センターで勤務し、この施設では特定行為を導入し特定行為研修施設ともなっている。当院は、認定看護師7名、専門看護師3名であるが、特定行為研修を修了した者はまだいない。
 特定行為導入にあたっては、手順書の作成から医師との協働が必要となる。医師が特定行為についてどのように考えるのか、病院としてどこまで特定行為の実践をさせるのか、どの部分をタスクシフトしていくのかなど、病院全体でコンセンサスを得ることが重要となる。また、実践看護師を守るためには、医療安全管理体制を明確にすることも求められる。このような組織としての体制を整備していくことが、特定行為を導入するうえでは大切なこととなる。組織としての体制を整えるうえで、実践者は自分に何ができ、何がしたいのかを明確に述べることが必要である。研修を修了したから特定行為ができるというものではない。組織としての体制を整えたとしても、現場では様々な問題や軋轢が生じることが予測される。最終的には特定行為実践看護師が実践の中で信頼を勝ち取っていくことで、実践を拡大していくことができるものと考える。そのために特定行為実践看護師には、実践力とともにコミュニケーション能力、調整力、自己統制力などが大切である。