第21回日本救急看護学会学術集会

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パネルディスカッション

[PD6] 急性・重症患者の安楽とQOL向上を目指す苦痛緩和ケア~ホリスティックな視点で、生きる力を支える看護実践を考える~

Sat. Oct 5, 2019 9:00 AM - 10:50 AM 第4会場 (3F 中会議室301)

座長:遠藤 みどり(山梨県立大学 看護学部), 江川 幸二(神戸市看護大学)

[PD6-topic] 話題提供:周術期疼痛管理研究会の活動

井川 由貴 (山梨県立大学 看護学部)

周術期疼痛管理研究会は2003年に活動を開始し、今年で17年目を迎えます。
研究会発足のきっかけは、術後疼痛で苦しむ患者に適切なケアが提供できていないのではないかという、臨床看護師の問題意識の高まりでした。

 「手術して痛みが伴うのは当たり前」、「術後疼痛を軽減させるのは医者の仕事」ということが、まだ臨床の常識だった頃。手術を受ける患者の全人的苦痛を緩和したいという強い思いで参集した、医師、薬剤師、管理栄養士、急性・重症患者看護専門看護師、緩和ケア認定看護師、病棟・外来看護師、大学教員によって周術期疼痛管理研究会の活動が始まりました。研究会ロゴマークには、多職種で患者を支えるという意味と、研究会メンバーそれぞれの専門性から抱く願いと熱意が込められています。

 2020年を目前にした現在、術後疼痛管理の常識は大きく変わりました。高度医療による低侵襲手術の導入やPCA等の鎮痛の進歩だけでなく、多職種と連携したチームアプローチによって術後疼痛は著しく軽減し、個別性に大きく影響を受ける「痛み」に対して患者自身もそのコントロールに参画するという患者教育の発想も常識となりました。当然ながら、看護師教育はその前提にあります。周術期疼痛管理研究会は、この術後疼痛管理の常識の変遷を眺めながら、今なお術後疼痛に苦しむ患者に対して、多職種で患者を支えるという理念を主軸に据え、実践・研究・教育がリンクする研究会活動を続けることを使命と考えています。

 研究会の主な活動として、月1回の定例研究会で、メンバー間で周術期医療の情報共有や、困難事例・最新知見の共有学習を行っているほか、年1回の医療者向けフォーラムと、看護師向け教育セミナーを開催しています。フォーラムでは、毎年、地域や医療のニーズやトレンドを見据えたテーマを設定し、特別講演とシンポジウムを組み込む内容で好評を得ています。今年7月に開催された第17回フォーラムも盛会で、今年度までの参加者は延べ約1,000名になります。また、看護師対象の教育セミナーでは、術後疼痛の発生機序から、全人的な痛みのアセスメント、薬物療法の知識や非薬物療法としての対処を学び、チームで関わる多職種連携について学ぶ機会を提供しており、看護師への教育プログラムとして定着した講義の受講者は、総数約800名になります。

 今回、実践報告のあるCNSをはじめ、多職種で構成されている当研究会では、実践での成果を研究会に持ち寄ることで実践への示唆が得られ、さらに研究会での情報共有が新たなひらめきを産む場として機能している点は、当研究会の最大の強みだと言えます。

 本日は、話題提供として、多職種のメンバーが共に急性・重症患者の安楽とQOLを支える組織として機能している周術期疼痛管理研究会の活動を紹介します。

(研究会HP:https://popm.jp/)