第21回日本救急看護学会学術集会

講演情報

会長講演

[PL] 救急看護がもたらす危機管理ー命と生活を支える力ー

2019年10月4日(金) 09:20 〜 10:10 第1会場 (2F コンベンションホールA)

座長:作田 裕美(大阪市立大学大学院 看護学研究科)

[PL] 救急看護がもたらす危機管理 -命と生活を支える力-

浅香 えみ子 (獨協医科大学埼玉医療センター)

人々の健康に関わる仕事をする看護師は、対象が望む健康状態に近づくよう働きかけます。その先に見ているものは、人の生活であり、人生であると考えます。
 救急医療の場では、救命を最優先と考え可能な限りの資源を投入し、失われそうな命を取り留めています。これが救急医療体制の最大の目的であり、この目的に向かい教育・研究・実践の絶え間ない研鑽が進められています。このような救急医療の場で20年を過ごし、看護師としての救急医療を考える幾つかの経験をしてきました。
 救急医療の第一線で関わる中で
 救命された患者と家族とのかかわりの中で
 急変対応の研修を行う中で
 組織の管理を行う中で
 在宅の終末期療養を体験した中で
このような中で、看護師である私だからできたこと、すなわち救急医療の中で知識・技術を習得し、最終段階に至る人の生理的機能の全容を知ることでできた関わりがあることに気づきました。
 全ての看護師は、生活の支援者として機能することができます。しかし、治療を目的とする病院の中では、命があることが前提であり、命を守る関わりがスキップされています。生活支援者でありながら、この視点が生活の中に活かせず、安全・安心した療養環境の提供が不足しているように感じています。この時に救急看護師がもつ知識・技術、そしてその先を予測する力がこの課題解決の一助になると考えます。救急看護の力でできることは、危険性を予測し、それを回避する、またはその影響を最小限にすることだと考えます。
 起こり得る可能性の予測とその対策、そしてその実践、これは危機管理そのものです。予測される健康状態、生理的機能の変化は、命と生活にどのような影響を及ぼすのか、安全の範囲なのか否か、急激な変化なのか否か、苦しい・痛いのか否かなどの予測のもとに、対応を考え実践する救急看護は、人々の命と生活の危機管理を支えていると思われます。
 安心して生活するために外せない危機管理を健康問題の中で提供することは、人々の生活に安心と安全をもたらすものと考えます。救急医療を担う一員として救命を最優先課題として取り組むとともに、救急看護として、その知識・技術を活かした生活を支える役割とそこに必要な知識と技術、教育そしてシステムについて考えたいと思います。