[RTD12-4] 急性冠症候群が疑われたアナフィラキシーショック症例における看護実践の検討
【はじめに】
アナフィラキシーは、「深刻な、生命を脅かす全身性または全身性過敏反応」および「発症が急速で死亡の原因となり得る深刻なアレルギー反応」とされ、緊急性が高い病態である。アナフィラキシー症状における「胸痛」の出現頻度は4-6%と少なく稀である。今回、オピオイド投与される程の強い胸痛を主訴に緊急搬送されたアナフィラキシーショック症例を経験した。そこで急性冠症候群(以下ACS)を想起しながら展開した看護実践が妥当であったかについて文献的考察を踏まえ検討したので報告する
【目的】
胸痛を主訴としたアナフィラキシーショック症例に対してACSを想起した看護実践について検討する。
【方法】
1.対象および経過
60歳代、男性。2日前より腹痛があり、食思不振が続いていた。深夜、就寝中に突然の掻痒感と息苦しさが出現した。さらに30分後、胸部違和感が出現し、手持ちのニトログリセリンを舌下投与して様子を見ていた。しかし、症状は改善しないため、患者の状態を危惧した家族が救急要請した。救急隊接触時、全身性の発赤を伴うwarm shockの状態であり、アナフィラキシーショック疑いで緊急搬送となった。A病院到着直前から強い胸痛を訴えはじめ、発症から約3時間後、救急外来に搬入された。
2.倫理的配慮
個人を直接特定できる情報は使用しないこととした。ロック付きUSBを使用し個人情報の保護に留意した。
【結果】
収容前情報からACSの可能性を考慮して受けいれ準備を行った。入室時、苦悶様表情と呻吟あり、橈骨動脈触知不可で、著明な末梢冷感と冷汗を認めた。バイタルサインは、HR148bpm、血圧56/30mmHg、呼吸数40rpm、SpO2 92%(リザーバー酸素10L/分)、JCSⅠ-2-R、体温35.2℃。呼吸音はWheezeなく、呼吸補助筋の使用や頸静脈怒張はなかった。胸部全体にNRS10/10の胸痛あり、身の置きどころがない状態であった。痛みの移動はなく、血圧の左右差なし。ER搬入3分後、12chECGでST変化がないのを確認し、アドレナリン0.3㎎筋肉注射された。右大腿動脈よりシース留置され、採血・BGAを提出。結果、ラピチェック陽性、トロポニンT陰性、血清CK-MB 34IU/Lであった。ER搬入20分後、ショックは離脱できていたが、胸痛(NRS10/10)は持続しており、フェンタニル0.1㎎静脈内注射された。ACSを考慮し循環器内科にコンサルトされ心エコー実施。頻脈のため心壁運動異常は評価困難であったが、オノアクトでHRコントロール後に再評価されACSの可能性は否定された。
【考察】
患者の看護問題には、顕在化した問題と潜在化する問題があり、ERの看護師は潜在化している問題に対しても、予測性・準備性をもった看護実践が必要である。今回、患者はアナフィラキシーショックに強い胸痛を伴っていた。Simonsの報告によれば、心臓肥満細胞の生物学的調査から急性冠症候群として現れるアナフィラキシーが世界で議論され、本邦での報告は少ないが、胸痛とアレルギー反応が併発し、アレルギー性狭心症や急性心筋梗塞が起こるKounis症候群の報告があった。羽岡らは、「アナフィラキシー症例においては常に本症候群の可能性を念頭において心電図上の変化の有無を確認すべき」と提言している。
本症例は、心電図波形の変化はなくACSは否定され、ショックに伴う冠動脈の低灌流に起因していたものと考えられたが、アナフィラキシーショクにおいてACSを潜在化する問題として捉えて看護展開していったことは、妥当かつ重要な看護実践であった。
アナフィラキシーは、「深刻な、生命を脅かす全身性または全身性過敏反応」および「発症が急速で死亡の原因となり得る深刻なアレルギー反応」とされ、緊急性が高い病態である。アナフィラキシー症状における「胸痛」の出現頻度は4-6%と少なく稀である。今回、オピオイド投与される程の強い胸痛を主訴に緊急搬送されたアナフィラキシーショック症例を経験した。そこで急性冠症候群(以下ACS)を想起しながら展開した看護実践が妥当であったかについて文献的考察を踏まえ検討したので報告する
【目的】
胸痛を主訴としたアナフィラキシーショック症例に対してACSを想起した看護実践について検討する。
【方法】
1.対象および経過
60歳代、男性。2日前より腹痛があり、食思不振が続いていた。深夜、就寝中に突然の掻痒感と息苦しさが出現した。さらに30分後、胸部違和感が出現し、手持ちのニトログリセリンを舌下投与して様子を見ていた。しかし、症状は改善しないため、患者の状態を危惧した家族が救急要請した。救急隊接触時、全身性の発赤を伴うwarm shockの状態であり、アナフィラキシーショック疑いで緊急搬送となった。A病院到着直前から強い胸痛を訴えはじめ、発症から約3時間後、救急外来に搬入された。
2.倫理的配慮
個人を直接特定できる情報は使用しないこととした。ロック付きUSBを使用し個人情報の保護に留意した。
【結果】
収容前情報からACSの可能性を考慮して受けいれ準備を行った。入室時、苦悶様表情と呻吟あり、橈骨動脈触知不可で、著明な末梢冷感と冷汗を認めた。バイタルサインは、HR148bpm、血圧56/30mmHg、呼吸数40rpm、SpO2 92%(リザーバー酸素10L/分)、JCSⅠ-2-R、体温35.2℃。呼吸音はWheezeなく、呼吸補助筋の使用や頸静脈怒張はなかった。胸部全体にNRS10/10の胸痛あり、身の置きどころがない状態であった。痛みの移動はなく、血圧の左右差なし。ER搬入3分後、12chECGでST変化がないのを確認し、アドレナリン0.3㎎筋肉注射された。右大腿動脈よりシース留置され、採血・BGAを提出。結果、ラピチェック陽性、トロポニンT陰性、血清CK-MB 34IU/Lであった。ER搬入20分後、ショックは離脱できていたが、胸痛(NRS10/10)は持続しており、フェンタニル0.1㎎静脈内注射された。ACSを考慮し循環器内科にコンサルトされ心エコー実施。頻脈のため心壁運動異常は評価困難であったが、オノアクトでHRコントロール後に再評価されACSの可能性は否定された。
【考察】
患者の看護問題には、顕在化した問題と潜在化する問題があり、ERの看護師は潜在化している問題に対しても、予測性・準備性をもった看護実践が必要である。今回、患者はアナフィラキシーショックに強い胸痛を伴っていた。Simonsの報告によれば、心臓肥満細胞の生物学的調査から急性冠症候群として現れるアナフィラキシーが世界で議論され、本邦での報告は少ないが、胸痛とアレルギー反応が併発し、アレルギー性狭心症や急性心筋梗塞が起こるKounis症候群の報告があった。羽岡らは、「アナフィラキシー症例においては常に本症候群の可能性を念頭において心電図上の変化の有無を確認すべき」と提言している。
本症例は、心電図波形の変化はなくACSは否定され、ショックに伴う冠動脈の低灌流に起因していたものと考えられたが、アナフィラキシーショクにおいてACSを潜在化する問題として捉えて看護展開していったことは、妥当かつ重要な看護実践であった。