第21回日本救急看護学会学術集会

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一般演題(ラウンドテーブルディスカッション (RTD))

トリアージ

[RTD13] RTD(CN)13群 トリアージ

2019年10月5日(土) 10:30 〜 11:50 RTD会場 (2F 国際会議室)

座長:平山 幸枝(帝京大学医学部附属病院)

[RTD13-3] 頭部外傷によって来院した小児の院内トリアージ

宮本 菜月 (千鳥橋病院)

1、はじめに

 小児救急で頭部外傷は最も多い外傷性疾患であるが、軽症頭部外傷が多い。しかし、頭蓋内損傷を生じている場合は緊急度・重症度が高くなるため、外傷性脳損傷を見逃さないことが重要である。今回、頭部外傷で救急外来を受診した小児の事例を、文献的考察を含めて報告する。

2、目的

 小児頭部外傷のトリアージについて検討する。

3、事例紹介

 7歳男児。ER受診5日、2日前に机の下に潜り込み、頭部を打撲した。打撲後問題はなかったが、ER受診日の朝から3回嘔吐を認め、ERを受診となる。

4、結果

第一印象:重症感なし

バイタルサイン、身体所見:

 体温36.5℃、脈拍112回/分、意識レベルGCS15(E4、V5、M6)

 頭部打撲痕・腫脹なし、皮下血腫なし、頭蓋底骨折徴候の所見なし、嘔気なし

緊急度:非緊急

5、考察

 KuppermannらのPECARN研究グループにおいて、小児頭部外傷の重大な外傷性脳損傷(ciTBI)のリスクが低い患児を同定できる尺度として報告している。目的としては、不要な検査として頭部CT検査の回避である。2歳以上の場合、①意識変容②頭蓋底骨折の徴候③嘔吐④意識消失⑤激しい頭痛⑥激しい受傷機転の項目全てが陰性であれば、外傷性脳損傷の可能性は低い。しかし、今回は、嘔吐が見られていることから、ciTBIの可能性は否定できない。また、頭部外傷後の嘔吐については、小児は嘔吐中枢が未発達であるため、成人に比べ嘔吐しやすいといわれており、文献によると重症度に関わらず、頭部外傷後24時間以内に70~80%に嘔吐を認める。嘔吐の回数や発症時期による外傷性脳損傷の予測はできないとされている研究もあるが、3回以上嘔吐がある場合には外傷性脳損傷の可能性が高くなるという研究報告もある。つまり、嘔吐だけの所見で外傷性脳損傷を予測することは難しく、他の所見と経過から統合的に判断する必要がある。今回の事例においては、嘔吐のみの所見であり、時間が経過していることもあるが、外傷性脳損傷を完全に否定できないことから、「準緊急」の判断が妥当であったと考える。

6.結論
 小児の頭部外傷後の嘔吐について、外傷性脳損傷は完全に否定できないため、他の所見や経過等を考慮してトリアージを判断する必要がある。 小児の頭部外傷後において、①意識変容②頭蓋底骨折の徴候③嘔吐④意識消失⑤激しい頭痛⑥激しい受傷機転の項目全てが陰性であれば、外傷性脳損傷の可能性が低く、トリアージレベルについては低緊急から非緊急として判断できる。 小児の頭部外傷患者の院内トリアージにciTBI予測尺度を使用することは有用である。