第21回日本救急看護学会学術集会

講演情報

一般演題(ラウンドテーブルディスカッション (RTD))

重症患者看護

[RTD2] RTD(CN)2群 重症患者看護

2019年10月4日(金) 14:00 〜 15:00 RTD会場 (2F 国際会議室)

座長:青木 梢(公益社団法人日本看護協会 看護研修学校)

[RTD2-2] q-SOFA1点はこわい?

大麻 康之 (高知県・高知市病院企業団立 高知医療センター)

【はじめに】

2016年に日本版敗血症ガイドライン(以下「J-SSCG2016」という)が改訂され、敗血症の診断基準のスクリーニングとしてq-SOFAスコアが推奨された。今回、救急外来での初療で敗血症性ショックに陥った事例を体験したため、本事例の検討を行った。その結果、バイタルサインや血液データによる敗血症性ショックの潜在的リスクへの予測、q-SOFAスコアや平均血圧値の継続的なモニタリングを行うことが敗血症性ショックの早期認知のために重要であることが示唆された。

【目的】

q-SOFA1点の敗血症患者に対して救急外来看護師が行う、潜在的リスクの予測、継続的モニタリングの重要性を検討する。

【事例】

60代男性。胆管炎疑いでB病院からA病院に紹介された。

【倫理的配慮】

 今回の症例は、所属長の了承を得ており、また本学会のみで使用すること、個人が特定されないよう配慮した。

【結果】

救急外来入室時は、q-SOFA1点(RR30回/分、SBP128mmHg、GCS15点)であった。HR135回/分、BT39℃であった。血液ガスでは、呼吸性アルカローシスを認めており、Lac3.3mmol/Lであった。SOFAスコア7点(尿量は未測定)、急性期DICスコア6点であった。細胞外液1000ml負荷されたが頻脈持続していた。救急搬送された105分後、q-SOFA3点(RR30回/分、SBP80mmHg、GCS13点)となり敗血症の可能性が高まった。MAP53mmHgまで低下したためノルアドレナリン投与開始となった。結果、胆嚢炎からの敗血症の診断でHCU入院となったが、敗血症性ショックが進行したためICU転室し緊急で胆嚢摘出術となった。

【考察】
J-SSCG2016で提唱されたq-SOFAは、呼吸数、収縮期血圧、意識レベルによって素早く簡易にスクリーニングできるツールであり、敗血症を早期に認識するために重要であるとされている。本事例は、搬送時から呼吸性アルカローシスを呈するほどの頻呼吸であった。頻呼吸の存在はq-SOFAを1項目満たすだけでなく、敗血症起炎菌であるグラム陰性桿菌が産生するエンドトキシンによって呼吸中枢が刺激されていた可能性も考えられた。敗血症や敗血症性ショックの確定診断として重要であるSOFAスコアや乳酸値の上昇は組織への低潅流や臓器障害が示唆されていた。DICを併発する症例は、来院時に約半数でショック状態を呈していたといわれており、急性期DICスコア6点はショックに移行するリスクが高かった。このことから、入室時q-SOFA1点であってもバイタルサインや血液検査データから敗血症性ショックに移行する潜在的リスクは高かったといえる。また、q-SOFA上昇と共に急速に敗血症性ショックに移行したことを考えると、バイタルサインや血液検査データから敗血症性ショックの潜在的リスクを予測すること、q-SOFAや平均血圧の継続的なモニタリングを行うことが敗血症性ショックの早期認知のために重要であった。