第21回日本救急看護学会学術集会

講演情報

一般演題(ラウンドテーブルディスカッション (RTD))

救急看護師教育

[RTD5] RTD5群 救急看護師教育

2019年10月4日(金) 10:30 〜 11:30 RTD会場 (2F 国際会議室)

座長:背戸 陽子(日本医科大学付属病院 医療安全管理部)

[RTD5-4] 初期救急、二次救急患者の診療科選定を看護師が行う取り組み~現状と今後の課題~

野坂 栞1, 忠田 知亜紀1, 奥井 陽子1, 冨田 里美1, 森 輝美2, 足立 好美1 (1.鳥取大学医学部附属病院救命救急センター, 2.鳥取大学医学部附属病院小児病棟)

【はじめに】A病院は救命救急センターを有し、一次から三次救急患者の受け入れを行っている。2015年から救急車応需率を上げ、円滑な診療に繋げることを目的に、二次救急患者も全例受け入れを行うこととなった。更に、患者来院後に院内トリアージナースが、緊急度判定支援システムを活用した緊急度判定を行ったうえで、診療科選定を実施し、該当科へ診療依頼を行う取り組みが導入された。そこで、院内トリアージナースが行う診療科選定の精度を検証したことで、今後の課題を考察したため報告する。
【研究目的】事後検証内容に焦点を当て、A病院の院内トリアージナースが行う診療科選定の精度に関する現状と今後の課題を明らかにする。
【方法】調査期間:2018年6月~2019年3月
調査対象:院内トリアージナースが診療科選定を行った症例に対して実際に診療した医師
研究方法:対象となる医師に対して、診療科選定理由が適切であったか質問紙法を実施し、結果は単純集計を行った。
倫理的配慮:本研究は、研究者の所属機関の倫理規定に基づき、所属長の承認を得て実施した。データ収集および分析過程で個人情報が特定されないよう十分に配慮した。
【結果】院内トリアージナースが診療科選定を行った症例数(n)に対して、診療科選定根拠は適切であると回答が得られたのは、2018年6月99.9 %(n= 261)、7月99.4%(n=331)、8月99.7%(n=271)、9月98%(n=251)、10月99.2%(n=270)、11月100%(n=207)、12月98.5%(n=200)、2019年1月99.1%(n=237)、2月100%(n=163)、3月99.5%(n=210)であった。全体では、99.3%(n=2401)であった。そのうち、診療科選定根拠が希薄であり、明らかに他科選定が望ましいと指摘を受けた症例は、0.5%(13件)であった。
【考察】A病院の院内トリアージナースが行う診療科選定は、調査期間中において98%以上が適切であったという結果が得られており、診療科選定の精度は高いということがわかった。その背景には、AMIや脳卒中、頭部外傷など、疑う疾患によって、予め診療科が決められていることや、めまいやアレルギーなどの判断に躊躇する症状については、診療科選定のフロー図が作成されていることが関係していると思われる。更に、2018年から救急外来の体制を見直し、夜勤帯の院内トリアージナースは、看護師経験8年以上の者が2名以上としたことも、精度が高い結果となった要因の一つと思われる。しかし、今回の調査で、診療科選定根拠が希薄であると指摘を受けた症例は0.5%あったため、今後も次世代の院内トリアージナースの育成を行う上でも、新たなフロー図の作成や教育体制を検討していく必要がある。
 また、院内トリアージナースが、患者の緊急度判定と共に診療科選定を行うことは、過度なストレスがかかっていると考えられる。今後はストレスの内容にも注目し、職場環境の改善を図っていくことも課題である。