第21回日本救急看護学会学術集会

講演情報

シンポジウム

[SY8] 命の危険回避への取り組み―多様な立場からの急変前兆候対応への提案―

2019年10月5日(土) 14:40 〜 16:30 第5会場 (3F 中会議室302)

座長:瀬川 久江((元)独立行政法人 国立病院機構 呉医療センター), 渕本 雅昭(東邦大学医療センター大森病院)

[SY8-2] 一般市民向け急変の前兆を認識する研修プログラムの提案

嘉陽 宗司 (医療法人 おもと会 大浜第一病院)

近年は、一般市民からの医療サービスに関する需要の増加などから、救急車の搬送件数が増加傾向にある。
平成29年の消防庁による統計では救急搬送された傷病者の48.1%が軽傷と診断され帰宅、入院診療が必要な中等症傷病者は42.4%、重症・死亡者は9.5%となっている。この現状からは、必要な救急搬送の適応となる重症以上傷病者の搬送の遅れ、また医療機関においては限りある医療資源(人・物資)の有効活用への影響、さらには年々増加する医療費の圧迫などが懸念されている。
これらへ対応するために、国・自治体ではもちろん、医療機関やNPO法人、民間団体などが一般市民向け対象の応急救護(心肺蘇生法、脳卒中、急性管症候群、熱傷、外傷による止血法等)の研修などに取り組んでいる。
しかし、心停止や外因性の傷病は認識しやすいが、内因性の傷病は典型的な症状(胸部痛・激しい頭痛など)を呈さないこともあるため、重症化してから搬送することもある、また、一般市民目線で考えると、典型的な徴候以外から急性の病態を判断するのは難しいのが現状である。
そこで、疾患の典型的な症状にこだわらず内因性の急性に起こりうる徴候を一般市民が認識し、救急搬送の判断の精度を高める教育の提案をしていきたい。
一般市民向けの教育には、まずシンプルで理解しやすい内容が求められる。そこで、「バイタルサインからの臨床診断」の著者、入江惣五郎医師と共に開発し、研修医・看護師を対象に開催している「バイタルサインからの臨床推論コース:CPVS/BPVS」を一般市民向けにアレンジした市民向け、生命徴候の危機!ヤバイタルを認識しよう(仮称)という研修プログラムの開発を検討している。CPVS/BPVSコースで重要なキーワードとなっている“カテコラミンリリース”という、生命維持活動に影響を与える身体的ストレスに対する生理的反応を判断するために必要な、一般市民でも広く利用できるよう五感で観察する“ヤバイタルのポーズ” を駆使してこのカテコラミンリリース(急変の前兆)を認識し、適切なタイミングでの救急車利用の判断が実施できることを目的としている。
このシンポジウムでは市民向け研修会について提案し、お話させていただく。