第22回日本救急看護学会学術集会

講演情報

一般演題

救急外来看護

[O1] 一般演題1

[O1-24] ガイドラインに準じた心不全患者の救急対応

○杉本 とも子1、宇高 幸1、舛谷 元丸1 (1. 医療法人伯鳳会はくほう会セントラル病院)

キーワード:心不全

(はじめに)
日本は超高齢社会になり、救急搬入される患者も高齢者が多くなっている。また、心不全パンデミックと言う言葉も耳にするようになり、実際に心不全患者を救急で対応する機会も増えてきている。
心不全ガイドライン2017では、急性心不全に対する初期対応から急性期対応のフローチャートに準じて早期に治療介入し、循環動態と呼吸状態の安定を図る必要があるとされている。急性心不全の初期対応から急性期対応のフローチャートでは、トリアージ10分以内、次の60分で迅速評価、次の60分以内で再評価となっている。
そこで、私たちは、心不全ガイドラインのフローチャートに従って急性心不全患者の初期評価、治療開始を迅速に行い、急性心不全に取り組んで行く必要があると考えた。
今回、早朝に救急搬入された、急性心不全患者に対して、ガイドラインのフローチャートに準じた対応ができた症例を報告する。
(症例)
78歳 男性 独居 当院は初診で他院での通院歴もなし
呼吸苦のため自分で救急要請し、当院に搬入となる。
既往症:脳梗塞 内服なし。
8:10救急搬入。呼吸苦あり、発汗し皮膚は湿潤状態。下肢浮腫あり。バイタル測定。モニター装着。152bpm心房細動。血圧:188/114mmHg
酸素:カヌラ2L投与92%
8:12医師が搬入直後に簡易心エコー・肺エコーを行い、うっ血性心不全と診断。
8:13看護師は、指示の採血、血管確保をおこなう。
8:15ポータブルで胸部レントゲン撮影にて肺水腫を認める
8:22 検査技師により心電図施行。
8:25フロセミド20mg静注。
8:27ミオコールスプレー1プッシュ。
8:34ハンプ持続点滴開始。
9:10心エコー再検・搬入後初排尿。
9:45 入院
入院後より心臓大血管リハビリ介入
酸素投与3日間、ハンプ持続点滴終了までの期間は2日。安静度はアップし病状安定と判断され、モニター解除までの期間は5日。心臓リハビリを行い入院期間は13日である。
退院前の心配運動負荷試験の結果は嫌気性代謝閾値 3.67METS、Peak VO2/W 13.4ml/mim/kgと健常人の61%であった
以後は外来での心臓リハビリ、心不全サポートチーム介入を行うことなる。
(結果)
救急搬入時にトリアージを行い、搬入から2分後には医師が簡易エコーで、迅速評価を行い、うっ血性心不全と診断。治療開始の利尿剤投与までの所要時間は、救急搬入から15分、再評価は迅速評価後58分で、心不全急性期対応のフローチャートの時間内に判断、処置が行えた。入院2日後には、ハンプ持続点滴も終了し、5日後には病状も安定した。
(考察)
心不全患者の救急搬送時には、早期の鑑別診断及びガイドラインに基づいた適切な治療を行う事で、入院期間を短縮し再発を防げる可能性がある。そのために、当院のような2次救急病院では夜間帯や早朝では十万な人員確保は困難である。しかしトリアージ、初期評価、初期治療の対応は心不全患者のその後を大きく左右すると考えられ、医師・看護師によるチームワークによって弱点をカバーし、来院時早期からの介入は可能であると考える。
今回の事例をもとに、さらに心不全患者の救急対応をフローチャートに沿って、トリアージ、迅速評価、再評価を行い質の高い医療を目指していきたいと考える。
また、救急担当看護師だけでなく、外来看護師にも、教育、指導を行っていく必要があると考える。
また急性期治療後の心不全患者の殆どは完治するわけではなく、外来でのサポートも重要であり、当院では救急、入院、外来とシームレスな連携を目指して心不全サポートチームを立ち上げている。
(倫理配慮は所属施設の許可あり)
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