第22回日本救急看護学会学術集会

講演情報

一般演題

災害看護

[O4] 一般演題4

[O4-01] 新百合ヶ丘総合病院で経験した災害実例報告
           今後のシステム構築にむけて

○齊藤 裕己1、布施 友里恵 (1. 新百合ヶ丘総合病院)

キーワード:心のケア 、災害、病院

<はじめに>
災害コードも確立されていない状態で、登戸通り魔殺人事件の患児や患児家族の対応をおこなった。
災害時には他部署と協力し、災害に合わせて細かい配慮と、チームビルディングを発揮し、円滑な活動を行わなければならない。これらを達成させるためには課題も多い。今回は当日の動きを俯瞰し検証していきたい。
            <目的>
災害時に家族のケアも十分に行えるようなコード作成のための検証
            <研究方法>
1)5/28後方視的観察研究
2)研究で得られた情報は個人が特定できないように配慮し、研究データは研究以 外に用いることはない。当院の倫理委員会にて承認を得た。
            <結果>
8時04分  第1報 10数名が通り魔に刺された
8時10分  コントロール 各部署の課長を招集、クロノロジー・記録写真、必要物品指示
8時15分  第2報 頸部切傷小学生ショック、輸血などの受け入れ準備
8時23分  ①7歳女児 頸部刺傷搬送
8時25分  ②7歳女児右頸部鎖骨刺傷搬送
      心療内科・リエゾン看護師が到着
8時40分  ①②の患児が同時に初療室1.2入室
9時09分  十数人の傷病者が現場で待機、受け入れ要請③の搬送予定者は他院へ
9時10分  4名の患児受け入れ要請、承諾
9時33分  ④6歳女児顔面の切創、初療室3入室
9時55分  ⑤8歳女児右上肢切創、初療室1入室
      ⑥6歳女児顔面の切創、リカバリー7入室
10時05分  全て搬送は終了
            <考察>
1.現場にロジが参加し情報収集
提供される情報は断片的である。ロジが現場に行き情報収集をする必要がある。
2.現場の混乱は必ずある
看護師と医師、ロジがタッグを組み資源管理を行う必要がある。
3.作戦会議は早々に追加情報は正確に
初動前に災害宣言「災害スイッチ」を入れる。正確な情報を積極的に収集し活動に生かす。
4.災害に備える
災害初でもノロクロ記録ができるように見本を作り正確に記録する。非常時の物品管理を行う必要がある。
5.心のケアは救外到着時から介入が必須
杉本は「救外外来看護師は災害発生時、初動体制の立ち上げや多くの傷病者の受け入れ等初動対応に関わり、医療チームの中心的な役割を担うことが期待される」¹⁾と述べるように、今回の事例でも患児や患児家族と最も長く関われていたのは看護師である。
救急外来の看護師と入院病棟の看護師が1人の患児を受け持った。患児から出た言葉を聴き、できるだけ子どもの求めに応じた。率直な気持ちを聴き病棟の看護師に伝えた。当院では、全員入院をさせ24時間絶え間なく観察し心療内科医の介入ができる環境を作ったことが重要であると考える。
「災害時にストレスを受けるには被災者だけでなく、救護にあたる援助者もストレスを受ける。援助者は隠れた被災者と呼ばれている」⁷⁾当院では,労働安全衛生委員会がスタッフに対し、10日目に心のトリアージを行った。今回搬送された患児は全員命を落とさずに退院できたが、死亡事例にあたった場合のスタッフの精神的な負担は測りしれない。病院としてスタッフの心のケアも重要であると考える。
            <結論>
災害が発生した場合に備えての病院づくりが求められている
心のケアは救急外来の初動から開始していく必要がある
引用文献
1)救急外来看護師の災害初動時に関する知識・技術習得に向けた取り組み-災害研修会の導入を試みて 杉本寿代 京都府立医科大学病院 看護研究論文集2016
7)災害時のこころのケア 日本赤十字社 平成20年第5刷発行第4章p4