第22回日本救急看護学会学術集会

講演情報

一般演題

重症患者看護

[O5] 一般演題5

[O5-01] 成人におけるポジショニング枕と新生児用ウレタンフォームの体圧比較~下肢褥瘡予防を目指して~

○野澤 茉也1、計良 絢香1、水戸 のぞみ2、熊倉 寿希1、岩本 満美1 (1. 北海道大学病院 ICUナースセンター、2. 北海道大学病院 2-2ナースステーション)

キーワード:褥瘡、下肢褥瘡、体圧分散

【目的と背景】A病院ICUでは、病状や鎮静により自力で動くことが困難な患者に対し、エアマットレスを使用するほか、下腿の下にポジショニング枕を使用し踵部の除圧を実施している。しかし、2016年度は9例、2017年度は12例に踵部やアキレス腱部などに褥瘡が発生した。そこで、踵部やアキレス腱部に褥瘡が発生した事例や、ECMO使用患者や末梢循環不全患者など褥瘡リスクの高い成人患者に、新生児用ウレタンフォームを使用し踵部の除圧を行ったところ、褥瘡が改善する事例があった。今回使用した、新生児用ウレタンフォームが成人の下肢褥瘡予防に効果があることは検証されていない。そこで、ポジショニング枕と新生児用ウレタンフォーム使用時のアキレス腱部にかかる体圧値を測定し、比較検討を行うことで成人の下肢褥瘡予防における新生児用ウレタンフォームの有効性を明らかにすることを目的とした。
【方法】対象は、2018年11月~2019年3月にA病院ICUに在籍する医療スタッフのうち同意を得られた31名。ポジショニング枕と新生児用ウレタンフォームを使用し、仰臥位となった対象者の脹脛の下に踵部が浮くように各々を設置した。体圧測定器を使用しアキレス腱部の体圧を各々3回ずつ測定し、測定値をt検定にて解析した。また、対象者の下腿の長さ、脹脛の周囲径、その積と測定値を無相関検定にて解析した。
【倫理的配慮】本研究はA病院看護部自主臨床研究審査委員会の承認を得て実施した。
【結果】対象者31名中、男性23名、女性8名であった。下腿の長さは38~52㎝(平均45.8㎝)、脹脛の周囲径は31~39㎝(平均35.5㎝)であった。ポジショニング枕と新生児用ウレタンフォームの体圧値を比較すると、ポジショニング枕群(7.51±3.06mmHg)と新生児用ウレタンフォーム群(9.43±3.17mmHg)の間に有意差を認め(t=3.49,p<0.01)、ポジショニング枕の方が新生児用ウレタンフォームよりアキレス腱部の体圧は有意に低かった。また、下腿の長さ、脹脛の周囲径、その積と測定値との間に明らかな相関関係は認めなかった。
【考察】末梢血管が虚血を引き起こす可能性があると言われる32mmHgと比べ、どの測定においても体圧値が20mmHgを下回る低値であり、また下肢の長さ、太さとも強い正の相関を認めなかったことから、どちらを選択しても成人下肢の除圧ができると判断できる。A病院ICUでポジショニング枕を使用し褥瘡予防を実施しているにも関わらず、下肢に褥瘡が発生した原因は、末梢循環不全などの患者要因に加え、体位変換によるずれ力や弾性ストッキングの皺、不適切なポジショニング枕選択などの外的要因で生じたことが考えられた。そのため、適切な体圧分散寝具を選択し十分な圧抜きをすることで、下肢褥瘡を予防していくことができると考える。
【結論】ポジショニング枕の方が、新生児用ウレタンフォームよりアキレス腱部にかかる体圧は有意に低かった。しかし、両者ともにアキレス腱部の体圧は低く、どちらを選択しても十分な除圧を行うことができる。現在ポジショニング枕としてさまざまな製品があり、看護師の枕選択が、褥瘡発生の要因の1つとなり得るため、適切な選択ができるようさらなるデータ分析を行っていく。