第23回日本救急看護学会学術集会

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第23回日本救急看護学会学術集会 [一般演題] » 1.救急外来看護①

[OD101] 1.救急外来看護①

[OD101-03] 医療過疎地域に隣接する2次救急医療機関の救急外来看護師が抱える困難に対する介入課題の検討

○神田 直樹1,5、牧野 夏子2,5、田口 裕紀子4,5、源本 尚美3,5、内田 裕美2,5、城丸 瑞恵4,5 (1. 北海道医療大学看護福祉学部、2. 札幌医科大学附属病院看護部、3. 市立札幌病院、4. 札幌医科大学保健医療学部、5. 札幌医科大学クリティカルケア看護研究会)

キーワード:過疎地域、救急外来、困難

背景
 我々の研究グループは、2019年に北海道A市にあるB総合病院の救急外来を担当する看護師(以下、参加者)を対象に救急患者対応の中で抱く困難について調査を行った。その結果、【電話対応での状況把握と対応の難しさ】【救急患者の多様性がもたらす対応の難しさ】【救急患者受け入れ体制・教育の不十分さがもたらす難しさ】【同一医療圏内の他施設の救急医療体制に対する困惑】の4つの困難が明らかとなった1)
 対象となったB総合病院は4市5町で構成される第2次医療圏の中核医療機関である。しかし、専属の救急外来看護師は存在せず、各科の外来看護師が輪番制で救急外来を担当しており、救急外来をサポートするリソースナースが不足していると考えられた。よって、これらの困難を解決するためには、アクションリサーチの手法を用いた介入が効果的と考え本研究に取り組んだ。
目的
 アクションリサーチによる介入内容を検討するため、B総合病院が抱えている困難から介入課題を明らかにする。
研究方法
研究デザイン:アクションリサーチ
研究対象:介入課題を検討するためのアクションリサーチへの参加者は、B病院救急外来看護師3名と研究者7名。
分析方法:先行研究1)で明らかになった4つの困難を形成する30コードを分析対象とし、2次元展開法を用いて分析した。2次元展開法は、優先度を決定する方法の1つであり、縦軸に緊急度、横軸に重要度をとり研究者で議論を重ねコードを分布した。その分布から患者対応への影響が大きく、研究者が介入可能な課題を抽出し、参加者へ内容を提示し最終的な介入課題を明らかにした。本研究は研究者が所属する施設の倫理委員会の承認を得て実施した。
結果(図参照)
 分析の結果、「知識・技術」「連携(院内・地域)」「教育」「電話対応スキル」「マンパワー不足」「患者の特徴」に関する6つ課題が明らかになった。これらの課題を参加者に提示し、課題内容や課題解決の優先順位について合意形成を図った。その過程で「電話対応スキル」と「連携(院内・地域)」を構成していた内容より「電話対応業務の煩雑さ」が新たな課題として明らかになった。この結果を踏まえ介入可能な優先順位の高い課題を改めて検討した結果、受診相談や不定愁訴、不安の訴えなど電話対応と並行して業務を行わなくてはならない「電話対応業務の煩雑さ」、重症患者対応や経験の少ない疾患に対する判断などの看護実践上の「知識・技術」に関する課題、医師や救急隊との情報交換や他施設とのやり取りの中で生じている「連携(院内・地域)」に関する課題、経験の浅い看護師に対する「教育」に関する課題の4つが最終的な介入課題となった。
考察
 我々の3次救急施設を対象に行ったアクションリサーチ研究1)と比較すると、看護師教育や患者対応の知識や技術に関連する課題は同様であったが、電話対応業務の煩雑さのように異なる課題も抱えていた。背景には対応を必要とする患者の特徴や施設特性による救急医療体制が異なることが影響していると考えられた。また、アクションリサーチ法を用いて対話を重ねることにより、研究者の分析を深化させ、より現実的かつ重要な課題の抽出につながったと考える。

1)神田直樹, 田口裕紀子, 門間正子, … 城丸瑞恵(2019). 北海道地方都市の救急看護師が抱える困難に対するアクションリサーチを用いた介入の効果と影響. 北日本看護学会誌, 22(1) , 9 - 20 .
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