第23回日本救急看護学会学術集会

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第23回日本救急看護学会学術集会 [一般演題] » 1.救急外来看護②

[OD102] 1.救急外来看護②

[OD102-01] 救急外来における帰宅患者への看護実践
ー帰宅支援による救急外来受診後3日以内の再受診率の変化ー

○山根 英子1、清水 公子1 (1. 東京都立多摩総合医療センター)

キーワード:救急外来、帰宅支援、再受診

【はじめに】A病院救急外来は2次救急患者を受け入れ、年間総受診患者約3万人のうち8割が帰宅患者、3日以内の再受診率は8.9%である。再受診患者を減らすことは医療費の削減、より重症な患者の応需、地域の救急医療を守る一助となる。今回、看護師が実践する救急外来受診患者への帰宅支援による受診後3日以内の再受診率の変化を検証した。
【目的】救急外来を受診後帰宅する患者へ看護師が介入することで、3日以内の再受診率の変化を明らかにする。
【方法】2020年10月21日~同年11月30日にA病院救急外来を受診後帰宅する全患者に、独自に作成した帰宅支援シートを利用して帰宅支援の必要性のスクリーニングを実施。その結果と実施した支援内容を帰宅支援シートへ記載、その後救急外来を3日以内に再受診した患者の診療録、帰宅支援シートから調査内容を抽出、3日以内の再受診率を算出した。
【倫理的配慮】A病院倫理委員会の承認を受けた。救急外来待合・各診察室に研究概要、カルテ閲覧に同意がない場合は調査対象から外し、不利益が被ることはないことを明記したポスターを掲示した。
【結果】分析対象は帰宅支援シートを利用した1315名、帰宅支援シート利用率77%、入院率19.6%、救急外来受診患者・3日以内の再受診患者とも過半数が高齢者であった。帰宅支援シートによるスクリーニングではかかりつけ医に関する項目が半数以上を占め、かかりつけ医の必要性を説明し、かかりつけ医の受診を促した。その他、診察・処方内容や再受診のタイミング等補足説明の実施、独居等社会的問題、介護や経済的問題に対し、総合患者支援センター・地域包括支援センターの介入を依頼した。
 帰宅支援シートを利用した患者の3日以内の再診率は3.0%、帰宅支援シートを利用していない患者の3日以内の再診率は4.6%で、いずれも帰宅支援実施前の再診率(8.9%)と比べ減少し、帰宅支援シートを利用した患者の再診率は減少した。
【考察】救急外来患者の大半は帰宅患者で、帰宅後は自宅でのけがや疾患の管理が委ねられる。そのため帰宅後の時間経過とともに変化する症状を患者や家族が理解し、対応することが必要になる。救急外来看護師は帰宅患者を軽症な患者と単純に判断せず、診察終了後積極的に関わること、患者や家族が現在と帰宅後の状況も理解できるよう支援したことで、再受診患者減少につながった。また、かかりつけ医の受診促進や総合患者支援センター・地域包括支援センター等との連携、介護・福祉サービスの利用により、医学的に不要な再受診を防ぐことが可能であると考えられる。初回受診時から患者の問題を捉え、地域医療と連携することが再受診減少につながる有効な帰宅支援である。
 救急外来で看護師が実践する帰宅支援は、再受診患者の減少に繋がり、今後さらに加速する高齢化や救急患者増加に対し、救急医療と地域医療を守るうえで有効な方策であると考える。今後、救急外来患者への帰宅支援が標準化されることで、救急医療を守り、かつ患者や家族の精神的負担の軽減、適切な地域の医療・福祉サービスの利用や住み慣れた地域で自分らしい暮らしを続けることが可能になると推察する。
【結論】帰宅支援シートを利用し、看護師が帰宅患者と関わることで再受診率は減少した。
【研究の限界】感染管理上COVID-19による感染症外来患者を研究対象から除外したため総受診患者数、再受診患者数ともに例年と比して減少し、正確な比較検討が困難であった。