第23回日本救急看護学会学術集会

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第23回日本救急看護学会学術集会 [一般演題] » 11.その他①(地域連携)

[OD1101] 11.その他①(地域連携)

[OD1101-03] 認定・専門看護師による救急患者・家族への意思確認に関する認識と実態

○柏 雅子1、山勢 博彰2、田戸 朝美2、山本 小奈実2 (1. 元山口大学大学院医学系研究科保健学専攻博士前期課程、2. 山口大学大学院医学系研究科保健学専攻臨床看護学講座)

キーワード:意思確認、救急患者・家族、認定・専門看護師

【目的】救急医療に高い専門性をもつ認定・専門看護師が,救急患者・家族への意思確認にどのような認識を持ち実践しているかを明らかにする。

【方法】1.調査期間:2020年9-10月 2.調査方法:救急患者・家族への意思確認に関する認識と実態に関するアンケートをインターネット上で行った 3.調査対象者:救急患者・家族直接ケアを実践している救急看護認定看護師,集中ケア認定看護師,急性・重症患者看護専門看護師 4.調査内容:調査カテゴリーは「情報収集・アセスメント」「情報提供」「意思確認のための調整」「意思確認に影響を与える背景」とした。これらをもとに調査項目を作成し,選択法または記述法にて回答を求めた 5.データ分析:単純集計,各調査項目間での比較,患者・家族への意思確認の実践と「意思確認に影響を与える背景」の各調査項目間での相関分析を行った

【倫理的配慮】所属施設の研究倫理審査委員会の承認を得て実施した。

【結果】1517名に依頼を行い279名から回答が得られ,回収率は18.4%だった。「情報収集・アセスメント」の調査項目では,治療開始前の事前に患者に対して意思確認するものは78.2%で,家族に対しては86.6%であった。また,治療経過中に患者に対して意思確認するものは48.1%,家族に対しては54.8%であった。「意思確認に影響を与える背景」の調査項目では,病院独自の意思確認に関するマニュアルは,ないが47.3%,あるが36.4%,わからないが16.3%で,医療倫理の知識を81.2%が活用していた。患者・家族への意思確認の実践と医療倫理の知識の活用の相関係数は0.519(p<0.001),患者・家族への意思確認の実践とガイドラインの参考の相関係数では0.405(p<0.001)と中程度の相関がみられた。患者・家族への意思確認の実践頻度は,急性・重症患者看護専門看護師が救急看護認定看護師,集中ケア認定看護師より高く(p<0.001),病院独自のマニュアルがある・ないと回答した群がわからないと回答した群より有意に高かった(p<0.05)。

【考察】事前の意思確認実践の頻度が70%を超えていたのは,救急患者に関わる看護師が,治療の開始時期より救命できない可能性や意思確認の機会を逃す可能性を踏まえているためと考えられた。経過中において事前より低い頻度を示しているのは,救急の特徴である時間的猶予がないことによると推測された。施設での整備としては,意思確認に関するマニュアルがあったのは36%で,十分でない現状が明らかになった。その様な状況下であっても,調査対象者が認定・専門看護師資格を保有する集団であり,臨床において救急患者・家族と関わるスペシャリストとして,81.2%が医療倫理の知識を活用し,意思確認と医療倫理のつながりを認識し意思確認の実践につなげていた。また,ガイドラインの参考が意思確認の実践に中程度の相関があった理由として,救急患者は,状況が刻々と変化し個別の対応が必要であるため,ガイドラインに沿った対応の可否がわかれることが考えられる。さらに,病院独自のマニュアル有無の把握は意思確認への関心を示しており,それが意思確認の実践に繋がっていた。専門看護師は最も意思確認を行っており,教育課程において倫理的知識を学習する機会によるものと推測される。意思確認の実践の頻度を上昇するために,医療者が意思確認に関心をもてるきっかけや学習機会が必要と考えられる。