第23回日本救急看護学会学術集会

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第23回日本救急看護学会学術集会 [一般演題] » 5.重症患者看護③

[OD13] 5.重症患者看護③

[OD13-05] 救命病棟における行動制限開始時の判断に関する分析

○加藤 恵1、三ケ田 桃子1、今井 育実1、佐藤 絢子1、古舘 周子1、三上 佳澄2、冨澤 登志子2 (1. 弘前大学医学部付属病院、2. 弘前大学大学院保健学研究科)

キーワード:行動制限=身体抑制、J-PADガイドライン、リムホルダー=抑制帯、Text Mining

【目的】
救命病棟に入室する患者の中には安全確保のため行動制限する場合があるが、当院高度救命センターでは、集中治療室における成人重症患者の痛み、不穏、せん妄をより総合的に管理することを目的としてつくられたJ-PADガイドラインを取り入れたフローチャートを作成し、不要な行動制限がないように努めている。実際には行動制限開始時の迷いが存在する状況があるため、行動制限開始時どのように判断したのか明らかにする必要があると考えた。そこで本研究では救命病棟看護師が、患者の状態をどのようなアセスメントにより患者に行動制限を開始しているのかを明らかにする。
【方法】
2020年4月から6月までの3か月間、A病院高度救命救急センター病棟に入院した20歳以上の患者を対象とし行動制限開始時の看護記録より調査した。フローチャートは、集中治療室におけるJ-PADガイドラインを取り入れ作られており、患者の痛み、不穏、せん妄によって行動制限の開始を判断するものである。看護記録はText Mining Studio 5.0 for Windowsを用いてテキストマイニングの手法で単語の出現頻度、係り受け、ことばネットワークの解析をした。
【倫理的配慮】
研究者が所属するA病院倫理委員会の承認を得て実施し、得られたデータは個人が特定されないよう配慮した。
【結果】
対象者は29名(男性20名、女性9名)で平均年齢は69.7±15.7歳、意識レベルはJapan Coma Scale(以下,JCS)1桁5名、2桁11名、3桁13名だった。看護師の判断で行動制限を開始した時の看護記録の言語解析の結果、出現頻度が高かった単語は「リムホルダー」「開始」「動作」「両手・両上肢」「リスク」「ルート類」「抑制」「指示」などであった。また、頻度が2回以上の係り受けを抽出したところ「リムホルダー・開始・動作」「指示」「危険行動」などを中心としたグループであった。「リムホルダー・開始・動作」を中心としたグループは「行動制限」「継続」「抑制」や「リスク」と「両手・両上肢」が抽出された。「動作」は「リスク」とも関連性が見られた。「指示」を中心としたグループの中では「診療上」「療養上」、「応じる+できない」「応ずる+ない」と関連が見られた。また、係り受け頻度解析では、「診療上―指示」はJCS2桁の場合に多かった。
【考察】
単語頻度や係り受け頻度の多さからなんらかの「動作」が「リスク」として認知されるとき、また「診療上」「療養上」、「指示」に「応じる+できない」「応ずる+ない」の患者の状態を行動制限開始の判断にしていると考えられる。患者が診療上必要な指示に応じるか、応じないか、また意識レベルの程度により行動制限を開始していると考えられる。今回の状況分析により明らかになったことをふまえ、今後の運用を含め救命病棟行動制限フローチャートの改訂を検討する。