第23回日本救急看護学会学術集会

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第23回日本救急看護学会学術集会 [一般演題] » 5.重症患者看護①

[OD501] 5.重症患者看護①

[OD501-04] 高度救命救急センターHCUにおける排便障害患者に対する看護介入の実態調査

○高石 桃子1、山﨑 佳織1、濵野 由紀子1、今野 唯1、中澤 萌花1 (1. 埼玉医科大学総合医療センター)

キーワード:脊髄損傷、排便コントロール、HCU

目的
A病院HCUに転入する患者の4割は、脊髄を損傷した患者であり、様々な合併症を来たす。中でも自律神経や直腸機能が傷害されている患者は、便秘になりやすい傾向にある。患者の疼痛コントロールや創部管理に優先順位を置き、介入が遅れ転院直前まで気づかず、対処が遅れる事例や、イレウスを発症し治療が必要となった事例を経験した。治療と同時に排便に対する看護介入を行い、個別の患者に合った排便管理の確立を目指す必要がある。そのため本研究では、脊髄損傷患者の生活の質の向上を目指し、看護介入の実態や排便管理に対しての課題を明確にすることを目的とした。
方法
期間:2020年1月1日~2020年6月30日
対象:調査期間中A病院HCUに入院・転入した排泄のセルフケアができない脊髄損傷患者
方法:入院中の排便の有無を、看護介入状況(摘便、浣腸、温罨法実施、腹部マッサージ実施、医師への処方依頼の有無、食事・飲水の促し)と患者のデータ(排便回数、便性状、薬剤の使用、腸蠕動音、食事量)を収集し調査する。
倫理的配慮:A病院倫理委員会の承認を得て、診療録から取得した情報は統計的な処理を行い、目的以外には使用しない。
便秘の定義:本研究では3日以上排便がない状態とした。
結果
対象者は35人で、「便秘あり」20人のうち「看護介入あり」は15人、「便秘なし」15人のうち「看護介入あり」は10人であった。看護介入の内容は「摘便」13人、「薬剤の依頼(内服、浣腸)」3人、「飲水促し」3人、「離床」3人であった(重複あり)。看護介入開始日は、便秘1日目は0人、2・3日目は各1人、4・5日目は各2人、6日目は4人、7日目は5人であった。対象者のAISA機能障害尺度(以下ASIA)による便秘の内訳は、A:3人/7人中(43%)、B:1人/1人中(100%)、C:5人/9人中(56%)、D:10人/12人中(83%)、その他:1人/6人(17%)であった。便秘で「看護介入あり」の15人は、ASIA:A~Cは100%、ASIA:D7人70%、その他:0%はであった。排便管理に対する看護介入の有無をオッズ比で表記(表1)した。便秘ありの患者に関して、看護介入のある患者はオッズが3であった。
考察
AISAの重症度に関わらず、便秘に対し看護介入していることが分かり、HCU看護師の排便障害リスクを意識した行動ではないかと考えられた。しかし、便秘に対しての看護介入では、介入のタイミングや患者へのアプローチの仕方が異なっていることがわかった。早く介入した場合でも排便のない状態から5日目、最長で11日目で介入していた。A病院HCUに入院・転入してから6日以上排便がないと、スタッフが看護介入を始めるケースが多かった。介入が遅くなるほど合併症による入院生活延長に繋がることが示唆された。このことより、複数ある看護介入の方法から、患者の個別性にあった排便コントロールを模索し、スタッフと知識や情報を共有し、最適な選択をHCU転入時から行うことが求められる。2日間排便の確認ができていなければ3日目で看護介入を開始できるようなスタッフ教育やシステムの構築が課題である。
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