第23回日本救急看護学会学術集会

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第23回日本救急看護学会学術集会 [一般演題] » 9.医療安全①

[OD901] 9.医療安全①

[OD901-03] 院内緊急コールシステムの現状とその課題

○田村 麻衣1、表 佳代1、松島 圭吾1、阿部  雅美1、芝田 里花1 (1. 日本赤十字社和歌山医療センター)

Keywords:緊急コールシステム、救急コール、急変の前兆、DNAR

【目的】
救急コールの現状分析を行い、今後の院内の急変対応の質の向上・救命率の向上を目指すことを目的とする。

【研究方法】
1) 対象
 2020年4月から2021年3月までの救急コール21事例
2)調査内容
患者の年齢 主疾患 入院から急変までの期間 術後の急変であったかどうか 急変から救急コールまでの時間 急変の前兆があってから救急コールまでの時間 主治医へのコールの有無 Do Not Attempt Resuscitation(以下DNAR)の周知状況
①〜⑧の内容から、A病院の救急コールに関する傾向をカテゴリー化し、問題点を抽出した。
3)用語の定義
急変の前兆:A病院のRapid Response Systemの起動基準とする。
DNAR:「尊厳の概念に相通じるもので、癌の末期、老衰、救命の可能性がない患者などで、本人または家族の希望で心肺蘇生法を行わないこと」とし、日本救急医学会救命救急法検討委員会からの定義を引用する。

【倫理的配慮】
事例は、個人の特定はされないよう匿名化し、データは本研究の目的以外に使用することはない。また研究終了後、本件全ての分析結果を破棄する。本研究は倫理委員会の承認を得た。

【結果】
1)患者背景
患者の年齢については20歳代・30歳台代・50歳代がそれぞれ4.7%、60歳代が23.8%、70歳代が38.0%、80歳代が14.2%、90歳代が9.5%であった。主疾患は消化器内科疾患が14.2%、消化器外科疾患が33.3%、整形外科疾患が19.0%、循環器内科疾患が14.2%、呼吸器内科疾患が9.5%、脳神経外科疾患が9.5%であった。入院してから救急コールまでの期間は約3〜7日であった。21事例の52.3%が術後に急変しており、術後3日以内の救急コール事例は18.1%であった。
2)救急コールについて
急変を発見してから救急コールまでの時間は平均5.4分であり、急変の前兆があってから救急コールまでの時間は平均4.9時間であった。急変の前兆があった事例は52.3%であり、これらの全事例に救急コールの平均4.9時間前に何らかの急変の前兆があったことが明らかとなった。急変の前兆は頻呼吸が54.5%、頻脈・虚脱がそれぞれ18.1%、冷感が9.0%であった。急変の前兆があった事例の45.4%は、救急コール時心停止または呼吸停止となっており、心肺蘇生法実施後に心拍が再開した事例は20.0%であった。急変の前兆があった11事例中5件(45.4%)が急変の前兆に気付いており、6件(54.5%)が「おかしい」と思ったが急変の前兆と判断しきれていなかった。急変の前兆は継続的に観察し、主治医から何らかの指示を得て様子観察を行っていた。21事例の中で救急コールより先に主治医に連絡している事例が57.1%あった。DNARに関しては全ての事例においてDNARの周知が不十分であった。

【考察】
21事例の52.3%が術後に急変しており、術後3日以内に急変した事例は手術侵襲が急変の要因のひとつであったと考える。しかし、術後の侵襲と急変の関連について判断するためには診療録に書かれている情報からの分析が困難であった。
「おかしい」と思ったが急変の前兆と判断しきれていなかった事例が54.5%あったことから、急変の前兆を周知し、指導を行っていく必要があると考える。また、救急コールより先に主治医に連絡している事例に関しては、救急コールの要請基準の理解が不十分であった可能性が考えられ、救急コールの要請基準を周知することが必要である。
 DNARに関してはDNARの周知が不十分であることが明らかとなり、DNARを周知できるシステムの構築が課題となると考える。