第23回日本救急看護学会学術集会

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第23回日本救急看護学会学術集会 [指定演題] » パネルディスカッション

[PD3] [パネルディスカッション3] 東京オリンピック・パラリンピックにおける救急医療体制の構築と今後の課題

2021年10月23日(土) 15:10 〜 16:50 ライブ1

座長:佐藤 憲明(日本医科大学付属病院 看護部)、山勢 博彰(山口大学大学院医学系研究科)

15:50 〜 16:10

[PD3-03] 東京2020オリンピック競技大会 地方会場の対応~札幌会場~

○田口 裕紀子1,2 (1. 札幌医科大学保健医療学部看護学科、2. 札幌医科大学北海道病院前・航空・災害医学講座)

キーワード:東京2020オリンピック、札幌、救護

東京2020オリンピックは、マラソン・競歩とサッカー競技の一部が札幌会場で開催された。大会に先駆け、札幌では2021年5月にマラソン競技のテストイベントが開催された。自身はこのテストイベントと、大会中のサッカー試合会場およびマラソン・競歩会場の関係者救護に携わった。また、サッカー練習会場やドーピング検査に対応する看護師の確保にも協力した。
 大会前には各競技会場の医務室の設営や救護動線、医療資機材の確認を救急医とともに行なった。また、本大会の救護においては過去のスポーツイベントでは経験してこなかったCOVID-19対策も必要となり、発熱患者専用隔離室の準備や疑似症傷病者の診療動線などを事前に確認した。
 大会期間中の札幌は、18日間連続で30度以上の真夏日となる例年にない猛暑が続き、屋外競技となるマラソン・競歩の大会期間は湿度も高く、熱中症警戒アラートが発令される状態であった。そのため、コース上給水所の氷袋やゴール後のアイスバス等の準備が強化され、女子マラソンの開始は1時間前倒しされたが、女子マラソンでは出場選手88人中15人、男子マラソンでは106人中30人が途中棄権する過酷なレースとなった。
 大規模スポーツイベントにおいて医療スタッフは、大会運営者との連携の他、傷病者の搬送を想定した消防との連携、指揮命令系統および連絡系統の確立、救護スタッフ内のチームビルディング等を行なうことが重要となる。また、各種競技による特徴的な傷病やマスギャザリングを想定した多数傷病者への対応スキルも必要となる。このような多職種連携やチームのマネジメント、傷病者対応において、その能力を発揮できるのは救急看護師であると実感しており、救急看護師がイベント救護に携わる意義は大きい。しかし、病院内での救急看護活動とは異なるスキルも要求されるため、安全・安心な大会を支える救護の実践には、各種イベント救護に対応できるスキルを身につけるための教育の構築が必要であると考える。