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[R4-08] 生物起源あられ石におけるNa置換による格子定数変化
キーワード:生物起源あられ石、ナトリウム、格子定数、軸率、バイオミネラリゼーション
生物起源のあられ石は直方晶系(Pmcn,a < c < b)における軸率(a/bおよびc/b)が大きいという報告があり、この原因は結晶内に含まれる有機分子に起因する格子歪みであると提唱された。しかし、これが生物起源のあられ石に普遍的な特徴であるかは不明であり、有機分子が軸率の変化を起こす機構も明らかでない。本研究では生物起源14種,非生物起源5種のあられ石について、格子定数変化とその原因について調べた。粉末X線回折により格子定数を測定した結果、非生物起源あられ石からの軸率のずれは、陸生 < 淡水生 < 汽水生 < 海水生の貝殻の順であった。また、Naの含有量が多いほど軸率が大きかった。次に、海水生のアワビ(Haliotis discus)の貝殻真珠層を250°Cで加熱すると軸率が小さくなり、加熱前はNaが結晶内に均一に分布していたのに対し、加熱後は結晶のほとんどの領域でその濃度が減少し局所的に濃集していた。これは結晶中に固溶していたNaが加熱によって結晶格子から抜けたことを示す。以上から、生物起源あられ石に特徴的な格子定数は、Ca2+を置換したNa+によって誘起されると考えられる。