一般社団法人日本鉱物科学会2023年年会・総会

講演情報

口頭講演

R1:鉱物記載・分析評価(宝石学会(日本) との共催セッション)

2023年9月14日(木) 13:30 〜 16:30 820 (杉本キャンパス)

座長:北脇 裕士(中央宝石研究所)、黒澤 正紀(筑波大学)、坂野 靖行(産総研)

13:45 〜 14:00

[R1-02] スカルンと蛇紋岩起源のアンドラダイト・ガーネットの変種デマントイドの微量化学元素の比較研究

*阿依 アヒマディ1,2 (1. Tokyo Gem Science(合同)、2. GSTV宝石学研究所)

キーワード:デマントイド、スカルン起源と蛇紋岩起源

アンドラダイトの変種であるデマントイドガーネットは、スカルンホスト型と蛇紋岩ホスト型の二つのグループに大きく分けることができる。後者のグループでは、ロシアのウラル山脈のTagil地区のNizhny鉱山とイタリアのVal Malendo鉱山は代表的な産出地であったが、イランのケルマーン州やパキスタンのハザラ地区のカガン渓谷地域は新たな供給源となった。これらのデマントイドを含んでいる蛇紋岩層は、超苦鉄質な母岩の比較的低程度の熱水/変成交代作用によるものです。<br data-uw-rm-sr="" /> 枯渇になったロシアのNizhny鉱山から200㎞離れたKorkodinとPoldnevaya地域から新たにデマントイドが発見され、Korkodin鉱山では褐色味の強い緑色が多く産出され、加熱の対すようになります。Poldnevaya鉱山のものは褐色味が少なく、明るい緑色を呈したデマントイドを加熱処理しないで国際マーケティングに提供しています。また、パキスタンのBaluchistan州のKhuzdar地域の新しい鉱床から産出されたデマントイドが、やや薄く、黄緑色から緑色の範囲で、ロシア産デマントイドと同様に美しい繊維状のChrysotile(クリソタイル)が含まれ、蛇紋岩起源であることを確認した。顕微鏡拡大検査では、クリソタイルの繊維状内包物は結晶面に向かって放射状に広がります。多くのサンプルの中心部には、黒色不透明なクロマイトも観察され、蛇紋岩ホストのデマントイドで一般的に観察されるインクルージョンと同様であることを再度確認できている。 本研究では、両国の新鉱山からサンプルを入手し、そして同蛇紋岩起源であるイラン産、イタリア産のデマントイドと、スカルン起源であるナミビア産、マダガスカル産デマントイドと比較研究を行い、内包物の種類、緑色の主な発色元素であるクロムの含有量、その他の特異な微量元素の分布などについて詳細に調べた。 蛇紋岩起源のデマントイドに結晶周囲へ放射状に分布したクリソタイル以外に黒色クロマイトがよく含まれ、唯一パキスタン産サンプルにクロマイトの代わりにマグネタイトが存在したことが初めて分かった。スカルン起源のデマントイドにこのよう内包物がなく、wollastonite(珪灰石)、diopside(透輝石)の集合体、成長管などが含まれている。レーザーアブレーション‐誘導結合プラズマ-質量分析(LA-ICP-MS)分析では、イラン産デマントイドには数千ppmの高含有量のCrが検出され、その次はロシア産、パキスタン産とイタリア産の順になっている。しかし、Crが10 ppmを下回るものもあり、その含有量はスカルン起源のデマントイドと同範囲を示した。そのような低Cr含有の蛇紋岩起源のデマントイドとCrに乏しいスカルン起源のデマントイドをさらに分析し、その他の微量元素の分布を比較した結果、スカルン起源では高いGaが検出され、両者を明確に識別することができた。また、同蛇紋岩起源の四か国からのデマントイドと、スカルン起源の二か国のデマントイド同士を比較し、それぞれ識別できるケミカルフィンガープリンのダイヤグラムを確立した。
R1-02