15:00 〜 15:15
[R7-02] 東松浦玄武岩の晶洞に産する淡青色セピオライトの呈色要因について
「発表賞エントリー」
キーワード：加部島、セピオライト、銅、アルカリ玄武岩
佐賀県呼子町周辺に分布する東松浦玄武岩と呼ばれるアルカリ玄武岩には白色～淡緑色のセピオライトが産出し，石橋（1974）にて新産例として報告されている。呼子町の加部島には，石橋によってセピオライトの産出が報告された玄武岩と同一のフローユニット（無斑晶質玄武岩B2）（小林ほか，1955）が分布するが，加部島の玄武岩晶洞中に産するセピオライトは淡緑色でなく淡青色を呈する。セピオライトはFeやNiの遷移金属元素が含まれると緑色系統の色を呈色することが知られている（大塚ほか，1992）が，なぜ加部島でのみ他地域に産出しない淡青色のセピオライトが見られるのかについては未解明である。そこで，本研究では淡青色セピオライトの呈色要因を解明することを目的とした。本研究にはエネルギー分散型X線分析装置搭載の走査型電子顕微鏡および電界放出形電子プローブマイクロアナライザ，高分解能透過型電子顕微鏡，レーザーアブレーション誘導結合プラズマ質量分析装置（LA-ICP-MS）等の機材を用いた。
淡青色セピオライトが産する加部島のアルカリ玄武岩は岩石中に直径100–500 μmの楕円形の晶洞が存在する青灰色で緻密な岩石であり，100 μm以下のかんらん石および斜長石の斑晶と斜長石，アルカリ長石，イルメナイトおよびチタノマグネタイトからなる基質から構成されている｡母岩であるアルカリ玄武岩の特徴としては，斑晶が少なく，マントルおよび地殻由来の捕獲岩を含むことが挙げられる。加えて，極まれに1 μm程度の黄銅鉱や離溶組織を有するクロム鉄鉱が存在する。二次鉱物としては，CoおよびNiを含有する濃青色のマンガン酸化物が見られる。
加部島のアルカリ玄武岩晶洞中に産する晶洞鉱物としては，セピオライトの他にイルメナイト，方解石，およびMn酸化物が認められる。セピオライトは長径20 μm程度の半球状をしており，白色～淡青色を呈し、鉱物表面にはいずれも0.5 μm以下の隙間を有する海綿状組織が存在する。また，晶洞断面を観察するとセピオライトは母岩を覆う黄褐色の緑泥石様鉱物をさらに覆うように産し，その厚さは5-10 µmである。淡青色セピオライトの主成分の割合は，SiO2が46.48 wt.%，MgOが16.89 wt.%，Al2O3が4.69 wt.%であり，LA-ICP-MSによる微量元素測定では遷移金属元素として，Mnが0.403 wt.%，Fe3+が0.392 wt.%，Cuが0.145 wt.%，Tiが0.036 wt.%，Crが0.012 wt.%，Niが0.010 wt.%検出され，Zn，CoおよびV は0.01 wt.%以下であった。また，晶洞中の緑泥石様鉱物からセピオライトにかけて直線上に微量元素測定を行った結果，緑泥石様鉱物から晶洞中のセピオライトにかけてFeの含有量は減少し，Cuの含有量は増加する傾向が見られた。LA-ICPMSの微量元素測定の結果，遷移金属元素としてはMnとFeの含有量が高いが，レーザーの照射径は5 µm程度であるため，得られた値は晶洞中に共生するFeの含有量の高い緑泥石様鉱物やMn酸化物が一部混ざった値である可能性がある。そこで，透過型電子顕微鏡を用いて晶洞中のセピオライトの微細領域において定性分析を行った。その結果，淡青色セピオライトのEDSスペクトル中にFeおよびMnのピークは検出されなかった。
以上の結果より，淡青色セピオライトに含まれる青色を呈する要因となる遷移金属元素としてはCuが最も多く含まれていることが分かった。セピオライトは重金属元素では特にCuを吸着しやすいことで知られており（Brigatti et. al.，2000），６配位席のMgがCuと置換することも実験によって確認されている（北山ほか，1996）。Cuを含む粘土鉱物（アロフェン）が青色を呈することは知られており（Grundmann et. al., 1990）， Cuがセピオライトの淡青色の呈色要因である可能性は高い。しかし，セピオライトにCuが吸着もしくは6配位席を置換した場合に，どのような色を呈色するかについての報告はないため，Cuを含むセピオライトが淡青色を呈するかどうかは今後検討が必要である。
淡青色セピオライトが産する加部島のアルカリ玄武岩は岩石中に直径100–500 μmの楕円形の晶洞が存在する青灰色で緻密な岩石であり，100 μm以下のかんらん石および斜長石の斑晶と斜長石，アルカリ長石，イルメナイトおよびチタノマグネタイトからなる基質から構成されている｡母岩であるアルカリ玄武岩の特徴としては，斑晶が少なく，マントルおよび地殻由来の捕獲岩を含むことが挙げられる。加えて，極まれに1 μm程度の黄銅鉱や離溶組織を有するクロム鉄鉱が存在する。二次鉱物としては，CoおよびNiを含有する濃青色のマンガン酸化物が見られる。
加部島のアルカリ玄武岩晶洞中に産する晶洞鉱物としては，セピオライトの他にイルメナイト，方解石，およびMn酸化物が認められる。セピオライトは長径20 μm程度の半球状をしており，白色～淡青色を呈し、鉱物表面にはいずれも0.5 μm以下の隙間を有する海綿状組織が存在する。また，晶洞断面を観察するとセピオライトは母岩を覆う黄褐色の緑泥石様鉱物をさらに覆うように産し，その厚さは5-10 µmである。淡青色セピオライトの主成分の割合は，SiO2が46.48 wt.%，MgOが16.89 wt.%，Al2O3が4.69 wt.%であり，LA-ICP-MSによる微量元素測定では遷移金属元素として，Mnが0.403 wt.%，Fe3+が0.392 wt.%，Cuが0.145 wt.%，Tiが0.036 wt.%，Crが0.012 wt.%，Niが0.010 wt.%検出され，Zn，CoおよびV は0.01 wt.%以下であった。また，晶洞中の緑泥石様鉱物からセピオライトにかけて直線上に微量元素測定を行った結果，緑泥石様鉱物から晶洞中のセピオライトにかけてFeの含有量は減少し，Cuの含有量は増加する傾向が見られた。LA-ICPMSの微量元素測定の結果，遷移金属元素としてはMnとFeの含有量が高いが，レーザーの照射径は5 µm程度であるため，得られた値は晶洞中に共生するFeの含有量の高い緑泥石様鉱物やMn酸化物が一部混ざった値である可能性がある。そこで，透過型電子顕微鏡を用いて晶洞中のセピオライトの微細領域において定性分析を行った。その結果，淡青色セピオライトのEDSスペクトル中にFeおよびMnのピークは検出されなかった。
以上の結果より，淡青色セピオライトに含まれる青色を呈する要因となる遷移金属元素としてはCuが最も多く含まれていることが分かった。セピオライトは重金属元素では特にCuを吸着しやすいことで知られており（Brigatti et. al.，2000），６配位席のMgがCuと置換することも実験によって確認されている（北山ほか，1996）。Cuを含む粘土鉱物（アロフェン）が青色を呈することは知られており（Grundmann et. al., 1990）， Cuがセピオライトの淡青色の呈色要因である可能性は高い。しかし，セピオライトにCuが吸着もしくは6配位席を置換した場合に，どのような色を呈色するかについての報告はないため，Cuを含むセピオライトが淡青色を呈するかどうかは今後検討が必要である。