14:30 〜 14:45
[R1-10] 小笠原諸島父島, 宮之浜から産出したzeoliteと変質したボニナイトの関係
キーワード:沸石、ボニナイト、十字沸石
はじめに ボニナイトはMg, Cr, Niに富み液相濃集元素に乏しい安山岩で, olivine, clinoenstatite, enstatite, augite, Cr-spinelからなるガラス質の岩石である。ボニナイトの空隙を充填する形で多様なzeolite鉱物が産出することがNishido(1982), Fujita et al(2016)らによって報告されている。ボニナイトは岩石分類的にはplagioclaseを含まないとされており, plagioclaseの分解に伴ってzeolite鉱物が形成されるとする一般的な生成過程を考えることが難しい。本研究では, ボニナイトにおけるzeolite鉱物の生成過程を解明することを目指して, 検討を行った。方法 試料は父島北部の宮之浜海岸の露頭から採取し, ボニナイトの空隙内に産出するzeolite鉱物を含む晶洞鉱物を対象に解析を行った。偏光顕微鏡観察と粉末X線回折法(XRD)により各鉱物相の同定を行った。化学組成は研磨片を作成し, 晶洞鉱物およびボニナイトのガラス石基を電子線マイクロアナライザー(EPMA)により求めた.
結果 ボニナイトの空隙内に産出する晶洞鉱物としてanalcime, phillipsite, erionite, chabazite, heulandite, dachialdite, mordenite, apophyllite, barite, calciteが同定された。これらの晶洞鉱物中のzeolite鉱物は, 主要化学組成比(Si/Al比とCa/(Na+K+Ca)比)のダイアグラムから, 2つのグループに分けられた。Type Iは, 母岩であるボニナイトのガラス石基の組成とほぼ同じSi/Al比を示し, I価からII価の陽イオンに幅広く分布するもので, analcime, phillipsite, erionite, chabaziteがこのグループに分類された。TypeⅡには, 母岩の組成に対して, Si/Al比が比較的高くなるにつれ, I価の陽イオンに富む傾向を示すもので, heulandite, dachialdite, mordeniteが分類された。火山角礫岩に取り込まれたボニナイトにはType Iのzeolite鉱物だけが同定されたのに対し, 枕状溶岩のボニナイトには, Type I, IIの両方のzeolite鉱物が見いだされた。また, 枕状溶岩のボニナイトにはType Iのzeolite鉱物結晶の外縁にType IIのzeolite鉱物が分布する組織が認められた。
考察 火山角礫岩中のzeolite鉱物も枕状溶岩中のzeolite鉱物も,そのSi/Al比と陽イオン組成は母岩のガラス石基の組成領域を起点とした連続的な組成分布を示した。このことは母岩のガラス石基から2Typeのzeolite鉱物が生成したことを示唆する。また, phillipsiteやchabaziteの各結晶相はSi/Al比が異なる組成分布を示しており,Siに富む傾向へ成長を示している。このことは産状ともよく一致しており, ① Type IとTypeⅡが生成する異なる熱水環境の存在,② 局所的にTypeⅠの生成後にTypeⅡが生成する比較的高温・低pHの熱水条件へ形成条件変化があったことを示唆している(Chipera and Apps, 2001; Taylor and Surdam, 1981)。すなわち,ボニナイト中のzeolite鉱物はガラス石基を起源とした2次的な熱水変質により生成したものであり,比較的低温の熱水条件であった形成条件と,局所的に高温の熱水条件への形成条件変化があったと考えられる。本研究では, zeolite鉱物の化学組成分布を詳細に検討したことにより, ボニナイト中のガラス石基を起源とするzeolite鉱物の生成環境に関わる知見が得られた。
結果 ボニナイトの空隙内に産出する晶洞鉱物としてanalcime, phillipsite, erionite, chabazite, heulandite, dachialdite, mordenite, apophyllite, barite, calciteが同定された。これらの晶洞鉱物中のzeolite鉱物は, 主要化学組成比(Si/Al比とCa/(Na+K+Ca)比)のダイアグラムから, 2つのグループに分けられた。Type Iは, 母岩であるボニナイトのガラス石基の組成とほぼ同じSi/Al比を示し, I価からII価の陽イオンに幅広く分布するもので, analcime, phillipsite, erionite, chabaziteがこのグループに分類された。TypeⅡには, 母岩の組成に対して, Si/Al比が比較的高くなるにつれ, I価の陽イオンに富む傾向を示すもので, heulandite, dachialdite, mordeniteが分類された。火山角礫岩に取り込まれたボニナイトにはType Iのzeolite鉱物だけが同定されたのに対し, 枕状溶岩のボニナイトには, Type I, IIの両方のzeolite鉱物が見いだされた。また, 枕状溶岩のボニナイトにはType Iのzeolite鉱物結晶の外縁にType IIのzeolite鉱物が分布する組織が認められた。
考察 火山角礫岩中のzeolite鉱物も枕状溶岩中のzeolite鉱物も,そのSi/Al比と陽イオン組成は母岩のガラス石基の組成領域を起点とした連続的な組成分布を示した。このことは母岩のガラス石基から2Typeのzeolite鉱物が生成したことを示唆する。また, phillipsiteやchabaziteの各結晶相はSi/Al比が異なる組成分布を示しており,Siに富む傾向へ成長を示している。このことは産状ともよく一致しており, ① Type IとTypeⅡが生成する異なる熱水環境の存在,② 局所的にTypeⅠの生成後にTypeⅡが生成する比較的高温・低pHの熱水条件へ形成条件変化があったことを示唆している(Chipera and Apps, 2001; Taylor and Surdam, 1981)。すなわち,ボニナイト中のzeolite鉱物はガラス石基を起源とした2次的な熱水変質により生成したものであり,比較的低温の熱水条件であった形成条件と,局所的に高温の熱水条件への形成条件変化があったと考えられる。本研究では, zeolite鉱物の化学組成分布を詳細に検討したことにより, ボニナイト中のガラス石基を起源とするzeolite鉱物の生成環境に関わる知見が得られた。