一般社団法人日本鉱物科学会2024年年会・総会

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R2:結晶構造・結晶化学・物性・結晶成長・応用鉱物

2024年9月14日(土) 12:30 〜 14:00 エントランスホール (東山キャンパス)

12:30 〜 14:00

[R2-P-07] GTS型Na珪チタン酸塩のMg2+ およびBa2+ イオン交換とその構造評価

*藤原 恵子1、河田 尚美1、中塚 晃彦1 (1. 山口大・院創成)

キーワード:GTS型Na珪チタン酸塩、イオン交換、粉末XRD

我々は、放射性廃棄物処理への応用を目指して、マイクロポーラス結晶であるGTS型Na珪チタン酸塩(Na-GTS:Na4[(TiO)4(SiO4)3]・6H2O)に対して様々な陽イオンのイオン交換特性を調査してきた。この研究は、福島第一原子力発電所において増え続ける汚染水の処理材料開発に重要である。Na-GTSは、4つのTiO6八面体が稜共有することによって1つのクラスターを形成し、そのクラスター同士がSiO4四面体と頂点共有によって結合することで骨格構造を形成する。1つの細孔内に4つのNa+イオンと6つのH2O分子が占有すると報告されている(Dadachov et al., 1997)。結晶構造は立方晶系から僅かに歪んだ三方晶系[R3m, a = 7.8123(6) Å, α = 88.794(9)°]に属する。福島第一原発事故で生じた汚染水に含まれる放射性元素のうち、放出量が多く半減期が長いCsやSrを効率よく回収・除去するための吸着剤の探索・開発が切望されている。本研究では、Sr2+とは有効イオン半径が異なるが、同じ2価の価数をもつMg2+とBa2+に焦点を当て、Na-GTSのイオン交換特性に及ぼすイオンサイズ効果の影響を検討した。

水熱合成したNa-GTSの単一相を、MgCl2およびBaCl2水溶液中(0 < CM ≤ 7.9 mol/L)25 °Cで24時間振とう処理することで、Mg2+およびBa2+イオン交換を行った。粉末XRDおよびTG-DTAにより各交換体の評価を行ない、Na-GTSから上澄み溶液中に溶出したNa+の原子吸光分析によりMg2+およびBa2+イオン交換体[Na4(1–x)M2x[(TiO)4(SiO4)3]・yH2O] (M:Mg, Ba)の交換率xを決定した。Mg2+およびBa2+イオン交換体におけるMg2+, Ba2+の最大イオン交換率は、それぞれCMg = 3.0 mol/Lとき x = 0.76、CBa = 0.25 mol/Lのとき x = 0.86であった。各交換体の粉末XRDパターンから単位格子体積(V)、TGから含水量(y)を求めた。その結果、xの増加に伴い、Mg2+イオン交換体のVyは増加傾向を示したが、Ba2+イオン交換体の両者はともに減少した。2価の陽イオンの場合、2Na+M2+の置換による陽イオン数減少のため陽イオンに配位する水分子数の減少が期待される。しかし、この期待に反して、Mg2+イオン交換体では、含水量(y)は増加した。これは、有効イオン半径の小さなMg2+ (例えばr= 0.72 Å)が大きなNa+ (例えばr = 1.02 Å)と交換することにより、水分子が入るための細孔内の空きスペースが増加したためであると考えられる。この陽イオンに配位する水分子数減少の効果よりも空きスペースへの水分子導入効果の方がより効果的であったと考えられる。そこで、Mg2+およびBa2+イオン交換体の陽イオンが、細孔内において、どのように分布しているかを検討した。Sr-GTS(立方晶系;空間群)の単結晶X線構造解析(Spiridonova et al., 2011)によって報告されたSr2+席(4eと6g)が、擬立方構造をもつMg2+およびBa2+イオン交換体のMg2+およびBa2+の可能な占有席とし、いくつかの占有モデルを仮定して粉末XRDパターンをシミュレーションした。実測のXRDパターンと比較した結果、Ba2+交換体中のBa2+は擬立方構造における4e席と6g席の両方を占有することが示唆された。
R2-P-07