10:00 〜 10:20
[R5-05] 揮発性物質を含んだ微惑星の衝突によるコンドリュールの形成
「招待講演」
キーワード:コンドリュール、微惑星、衝突
地球に落下してくる隕石の8割を「普通コンドライト」と呼ばれる種類が占めています.その体積の8割を「コンドリュール」と呼ばれる直径0.1-1mm程度の球体が占めます.年代を計測すると太陽系で最初の固体(CAI)が凝縮してから1-3百万年であることから,太陽系形成時に何らかの加熱イベントが発生し岩石が融解した上,何らかのメカニズムで細粒化した後に隕石母天体に落下,その後に熱変性および水質変性を受けて隕石になったものと考えられています.コンドリュールの組織から冷却速度が推定されており,10-1000 K/hrと見積もられています.第二次世界大戦直後から研究がされていますが未だに形成メカニズムが明らかになっていませせん.そのため,隕石中に残されている様々な記録の解釈ができていないのが現状です.形成メカニズムが明らかになれば膨大な隕石データから惑星形成過程に関する情報を取り出せるようになります.
これまでに提案されてきた形成メカニズムの中でも有力なものは「衝撃波加熱モデル」と「微惑星衝突モデル」です.前者においては,原始太陽系円盤に浮かぶダストアグリゲイトが衝撃波を通過することでガスとの摩擦によって加熱されます.後者では,惑星形成過程で必然的に発生する微惑星の相互衝突によって微惑星を溶融します.しかし両方には問題点があります.衝撃波が弱いとダストアグリゲイトは加熱されず,強いと蒸発してしまうため,衝撃波加熱モデルではコンドリュールを生成するパラメータ空間が狭いです.一方で微惑星の衝突においては,かなり高速の衝突速度が必要でありまた溶融したメルトをmmサイズまで分裂させるのが困難でした.
木星が形成されると,木星の巨大な質量によって周囲の微惑星の運動が励起されます.その結果として微惑星は高速衝突します.高速衝突した微惑星は岩石が溶融する程度まで温度が上昇します.水や有機物といった揮発性物質が微惑星に含まれていれば,温度上昇に伴って揮発性物質が急速に膨張し,岩石メルトが細かいサイズまで分裂することが可能です.ガスは膨張にエネルギーを使うため温度が低下します.ガスと接触しているメルトから熱がガスに移ることでメルトの温度も低下します.ここから冷却速度が決定されます.このプロセスの数値シミュレーションを行いました.その結果,コンドリュールのサイズは0.4-1.8mm,冷却速度は30-18,000 K/hrとなり,観測されているデータをよく説明することがわかりました.
普通コンドライト隕石は鉄の量と酸化還元度の違いでH,L,LLと分類されています.微惑星に含まれる揮発性物質が水の場合と有機物の場合とで酸化還元度が異なるため,コンドライト隕石の酸化還元度の多様性も揮発性成分の違いで説明できます.また,放射性物質の壊変によって微惑星内部が高温になっていることも考えられます.この場合金属鉄の一部は微惑星の中心へ移動してコアを形成し,衝突に関与する表面付近の鉄の量は少なくなります.これによって鉄の量の多様性も説明できます.コンドリュールの別の特徴として,KやNaといった揮発性物質が残されていること,また同位体分別を起こしていない,という点が上げられます.これらの特徴を満たすためには,コンドリュールの空間的密度が原始太陽系円盤における値よりもかなり高い必要があると言われてきました.衝突で形成されたコンドリュールの空間的密度およびガスの密度は非常に高いため,これらの特徴も自動的に満たすことができます.
これまでに提案されてきた形成メカニズムの中でも有力なものは「衝撃波加熱モデル」と「微惑星衝突モデル」です.前者においては,原始太陽系円盤に浮かぶダストアグリゲイトが衝撃波を通過することでガスとの摩擦によって加熱されます.後者では,惑星形成過程で必然的に発生する微惑星の相互衝突によって微惑星を溶融します.しかし両方には問題点があります.衝撃波が弱いとダストアグリゲイトは加熱されず,強いと蒸発してしまうため,衝撃波加熱モデルではコンドリュールを生成するパラメータ空間が狭いです.一方で微惑星の衝突においては,かなり高速の衝突速度が必要でありまた溶融したメルトをmmサイズまで分裂させるのが困難でした.
木星が形成されると,木星の巨大な質量によって周囲の微惑星の運動が励起されます.その結果として微惑星は高速衝突します.高速衝突した微惑星は岩石が溶融する程度まで温度が上昇します.水や有機物といった揮発性物質が微惑星に含まれていれば,温度上昇に伴って揮発性物質が急速に膨張し,岩石メルトが細かいサイズまで分裂することが可能です.ガスは膨張にエネルギーを使うため温度が低下します.ガスと接触しているメルトから熱がガスに移ることでメルトの温度も低下します.ここから冷却速度が決定されます.このプロセスの数値シミュレーションを行いました.その結果,コンドリュールのサイズは0.4-1.8mm,冷却速度は30-18,000 K/hrとなり,観測されているデータをよく説明することがわかりました.
普通コンドライト隕石は鉄の量と酸化還元度の違いでH,L,LLと分類されています.微惑星に含まれる揮発性物質が水の場合と有機物の場合とで酸化還元度が異なるため,コンドライト隕石の酸化還元度の多様性も揮発性成分の違いで説明できます.また,放射性物質の壊変によって微惑星内部が高温になっていることも考えられます.この場合金属鉄の一部は微惑星の中心へ移動してコアを形成し,衝突に関与する表面付近の鉄の量は少なくなります.これによって鉄の量の多様性も説明できます.コンドリュールの別の特徴として,KやNaといった揮発性物質が残されていること,また同位体分別を起こしていない,という点が上げられます.これらの特徴を満たすためには,コンドリュールの空間的密度が原始太陽系円盤における値よりもかなり高い必要があると言われてきました.衝突で形成されたコンドリュールの空間的密度およびガスの密度は非常に高いため,これらの特徴も自動的に満たすことができます.