一般社団法人日本鉱物科学会2024年年会・総会

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R8:変成岩とテクトニクス

2024年9月13日(金) 12:30 〜 14:00 エントランスホール (東山キャンパス)

12:30 〜 14:00

[R8-P-11] イタリア・アペニン山脈のオフィカーボネイトの流体包有物

金子 広幸1、*川本 竜彦1、メネギーニ フランチェスカ2、大澤 陽介1 (1. 静岡大学理学部地球科学科、2. ピサ大学地球科学教室)

キーワード:流体包有物、蛇紋岩、海水、二酸化炭素、オフィカーボネート

イタリアのアペニン山脈のBraccoオフィカーボネイトを採取し、その岩石記載とカルサイト中の流体包有物のマイクロサーモメトリーを行っている。この蛇紋岩体はパンペリー石相とされる比較的低い変成度を受けたオフィオライトの一部をなし、海洋底での変成作用の水熱変成脈組織や海洋底での堆積組織を保持しており、ジュラ紀の海水との相互作用を記録していると考えられる(Cannao et al., 2020, Chemical Geology)。

ラマン分光法とマイクロ蛍光X線分析によると、岩石は主にアンティゴライトとリザーダイトとカルサイトから構成される。今回は、カルサイトが作る脈の比較的大きな結晶中の塩水流体包有物のマイクロサーモメトリーを行った。他に細粒なカルサイト結晶も存在するが、流体包有物のマイクロサーモメトリーは難しく今回分析できなかった。また、同じ露頭に堆積性のオフィカーボネイト(Cannao et al., 2020)も存在するので、それらの流体包有物のデータも今後取得したい。

マイクロサーモメトリーの結果、凝固点降下量から見積もられる塩濃度は5.0±1.8 NaCl wt%(n=9)で、気相と液相の均質化温度は179±16℃(n=9)であった。同一薄片内で塩濃度は1から8 NaCl wt%の範囲で変動するが、同一の結晶内でも塩濃度が3 NaCl wt% 異なるものが存在し、その程度の変動幅を持つ塩水が蛇紋岩の炭酸塩化に関与したことを示す。

講演では、犬飼ほか(2023、鉱物科学会要旨)などの先行研究で報告した西アルプスの低変成度地域のオフィオライトに含まれるカルサイト中の流体包有物の塩濃度や均質化温度と比較することで、海洋底での蛇紋岩の炭酸塩化過程を議論したい。
R8-P-11