第27回日本看護管理学会学術集会

講演情報

シンポジウム

[SY3] シンポジウム 3
実践の場における看護師の成長支援

2023年8月26日(土) 15:25 〜 16:45 第2会場 (7F ホールB7-1)

座長:末永由理(東京医療保健大学医療保健学部看護学科), 谷口陽子(北里大学病院)

[SY3-] 企画趣旨

 2021年度の新人看護職員の離職率は10.3%と10%を超えた(日本看護協会、2023)。これは同様の方法で実施された2005年以降の調査の中で最も高い。同調査では35%の病院が2021年の総退職者が前年より増加したと回答しており、このうち約4割は退職者の増加に新型コロナ感染症が影響していると回答していた。2021年の新人看護職員は学生時代の最後の学年を新型コロナウイルス感染症に伴う緊急事態宣言下で過ごした世代である。新型コロナウイルス感染症の流行は看護基礎教育にも大きな影響を及ぼし、臨地実習はもとよりキャンパスでの授業も制約を受け、教育の場へのICT導入が加速した。それまでとは学び方が変わった新人看護師に対し、既存の育成方法の見直しが迫られている。 
これまで経験したことがないような事象への対応に加え、医療の高度化・複雑化、タスクシフト・シェアの進行による役割の見直し等、看護職は様々な課題に直面している。こうした課題に取り組み、問題解決していくためには、看護職の倫理綱領で謳っているように「常に、個人の責任として継続学習による能力の開発・維持・向上に努める」ことがより一層求められる。 
継続学習は生涯にわたって行うものであり、そのあり方について、看護職の生涯学習ガイドライン(日本看護協会、2023)では、「生涯学習は、学んだことを実践に活かし、実践から学ぶという循環によって行う」と示されている。実践からの学びを支援する方法の一つが「認知的徒弟制」(松尾、2023)である。伝統的な徒弟制では指導者が優れた実践を見せ、学習者の実践に対し助言するというように見て学ばせるが、これに加えて、認知的徒弟制では思考の言語化や内省の促進を通して学習者の自立的な活動を支援する。このような関わりは、実践の場で生じる様々な課題に対し、個々の看護職が取り組む手助けになりうると考える。 
看護職の生涯学習ガイドラインでは、実践の場にいる管理者や教育担当者等の重要な役割として「得られた学びを実践に活かすとともに、その実践から学ぶことへの支援」と述べている。新人看護師に限らず、どのような時期の看護職であっても、実践の場において自己の課題に対応しながら学ぶことを基盤とし、組織にはこの成長を支援していくことが求められている。 
このセッションでは、新人看護師、若手~中堅、中堅~ベテランの3つの時期に分け、3名のパネリストの方にどのような支援を受け、どのように学習し、それらが現在のキャリアにどう影響しているかを発表していただく。その後、フロアの皆様も含め、実践の中で、看護師の成長支援に必要なマインドや体制を含めた組織としての支援について議論したい。

引用文献
・日本看護協会:2022年 病院看護・助産実態調査 報告書、2023
・日本看護協会:看護職の生涯学習ガイドライン、2023
・松尾睦、築部卓郎:看護師を育てる認知的徒弟制、看護管理、31(7):580-590、2023