第65回歯科基礎医学会学術大会

講演情報

シンポジウム

メインシンポジウム2

「口腔と全身疾患研究の最前線 口腔微生物の“倜儻不羈”」

2023年9月17日(日) 14:10 〜 15:50 A会場 (百周年講堂(本館7F))

座長:川端重忠(阪大 院歯 微生物)、今井 健一 (日大 歯 感染免疫)

14:10 〜 14:35

[MS2-01] ゲノム疫学解析から見えてきた警戒すべき薬剤耐性菌のheterogeneity

〇明田 幸宏1 (1. 国立感染症研 細菌第一)

キーワード:薬剤耐性、腸内細菌目細菌、heterogeneity

近年、薬剤耐性が世界的な公衆衛生上の大きな問題となっている。世界各国は現状把握とともに新規薬剤開発や抗菌薬適正使用の推進等,薬剤耐性菌の拡散伝播を抑えるべくさまざまなアクションプランを進めている。対象となる薬剤耐性菌には様々な細菌種が存在するが、その中でも特に重要視されているものにカルバペネム耐性腸内細菌目細菌(CRE)が挙げられる。CREは「Drug of last resort」と見なされるカルバペネム系を含むほとんどの抗菌薬に耐性を示し、CREの血流感染例では半数程度を死に至らしめると報告されている。このようなCREのカルバペネム耐性の本質はβラクタマーゼに依る。このβラクタマーゼ遺伝子を含む薬剤耐性遺伝子が搭載されたプラスミドの伝播によりカルバペネム耐性・多剤耐性が菌種を超えて幅広く広がっているが、特定の菌種に依存しないことからMRSAのような従来型薬剤耐性菌と異なり、その探知が困難である。またCREは腸内細菌目細菌に属し、健常人の腸内環境における保菌等、医療機関内に留まらない拡散伝播が明らかとなっている。このような性質をもつCREの蔓延状況を把握する上でゲノム疫学的解析は有効であるが、その詳細な解析から一般的な検査・解析手法では探知できない新たなカルバペネム耐性を示すクローンの存在が明らかとなってきた。本シンポジウムでは、この新たな薬剤耐性メカニズムについて紹介するとともに、CREのゲノム疫学的解析から示された細菌集団におけるheterogeneityを、薬剤耐性菌対策において今後さらに警戒すべき特徴として議論したい。
【利益相反】著者は利益相反がないことを宣言する.