第65回歯科基礎医学会学術大会

講演情報

一般演題:口演発表

一般口演 発生・再生

2023年9月17日(日) 14:20 〜 15:00 D会場 (431講義室(4号館3F))

座長:山城 隆(阪大 院歯 矯正)

14:40 〜 14:50

[O2-D-PM1-03] ミオシン軽鎖のリン酸化を介した血管新生の薬剤によるコントロール

〇田村-辻 潔美1、田村 正人1 (1. 北大 院歯 口腔分子生化)

キーワード:血管新生、ミオシン軽鎖、ROCK

血管新生は糖尿病や癌などの疾患の発生や増悪に関与する一方、再生医療や組織移植の成功に欠かせない過程である。そのため、血管新生の制御は治療戦略の重要な課題である。血管内皮細胞の活動には、ミオシン軽鎖2(MLC2)のリン酸化を介したアクチンとミオシンの相互作用による細胞骨格の制御が重要な役割を果たす。MLC2はMLCキナーゼ(MLCK)によりリン酸化され、MLCフォスファターゼ(MLCP)によって脱リン酸化される。本研究では、MLC2のリン酸化を薬剤により正負に調節することで血管新生をコントロールする可能性を検証した。ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVECs)を用いて、MLCPを構成するPP1の阻害剤であるtautomycetinと、MLCK阻害剤であるML7の効果を検討した。その結果、血管ネットワークの形成はtautomycetinにより促進される一方、ML7により抑制されることが明らかになった。この血管形成の正負の効果は、tautomycetinによるリン酸化MLC2の増加、またはML7による減少に相関しており、MLC2のリン酸化を介した血管新生の調節機構の存在が示唆される。HUVECsの伸長機能は、tautomycetinにより増加し、ML7により抑制された。これらの阻害剤は増殖と遊走には影響を与えないことから、細胞形態への作用が関与することが示された。さらに、ゼブラフィッシュ胚を用いて血管発生における作用を解析したところ、血管長はtautomycetinにより促進し、ML7により抑制された。これらin vitroとvivoの解析により、リン酸化MLC2の誘導が血管内皮細胞の伸長を促進し血管新生を増加させる一方、その抑制は血管新生の阻害に働くことが明らかになった。本研究によって、MLC2のリン酸化を介した血管新生のコントロールの可能性が示された。