第65回歯科基礎医学会学術大会

講演情報

一般演題:モリタ優秀発表賞 ポスター発表

モリタ優秀発表賞ポスター発表

2023年9月16日(土) 13:20 〜 19:00 ポスター会場 (121講義室(本館2F))

[P1-2-15] エリスリトールはマウス歯肉およびヒト歯肉線維芽細胞における老化分子の発現を抑制する

〇横井 春奈1,2、古川 匡恵1、青木 優3、王 静舒1、幾代 依子1,4、四釜 洋介1,2、松下 健二1,2,4 (1. 長寿セ 口腔疾患研究、2. 東北大 院歯 長寿口腔科学、3. 第一三共ヘルスケア 研究統括、4. 九大 院歯 地域口腔保健開発)

キーワード:エリスリトール、歯周組織、老化抑制

従来、老化関連疾患の一種である歯周病の予防には、歯周病菌を減らすプラークコントロールが行われているが、宿主の老化制御による予防法は存在しない。一方、キシリトールなどの糖アルコールは虫歯予防の食品等で広く用いられているが、歯周組織に対するこれらの影響については不明である。本研究では、歯肉組織や歯肉線維芽細胞に対する、糖アルコールの一種であるエリスリトールの抗老化作用をin vitroおよびin vivoで評価した。6週齢若齢マウス群(YC群)と18月齢老齢マウス(AC群)および、18月齢老齢マウスに5%w/wエリスリトール水を自由飲水させた群(AE群)をそれぞれ6ヶ月飼育した後、歯周組織における老化関連分子の発現(p16, p21, γH2AX, NF-κBp65)と炎症性サイトカイン(IL-1β, TNF-α)のmRNAおよびタンパク質発現をPCRと免疫染色でそれぞれ比較検討した。また、過酸化水素およびLPS刺激で老化を誘導した培養ヒト歯肉線維芽細胞にエリスリトールを添加した時の細胞老化マーカーおよびSenescence-Associated Secretory Phenotype(SASP)因子等の発現変化を調べた。AC群ではYC群に比べ、歯肉組織におけるp16、p21、γH2AX発現とIL-1β, TNF-α のmRNA発現が有意に増加した。一方、AE群ではそれらが有意に抑制された。また、AC群歯肉ではNF-κBp65分子の顕著な増加が観察されたが、AE群ではそれが強く抑制された。さらに、老化誘導した歯肉線維芽細胞における老化マーカーおよびSASP因子の発現はエリスリトール添加で有意に抑制された。以上の結果より、エリスリトールが歯周組織や歯周細胞の老化を抑制することが示唆された。