第65回歯科基礎医学会学術大会

講演情報

一般演題:モリタ優秀発表賞 ポスター発表

モリタ優秀発表賞ポスター発表

2023年9月16日(土) 13:20 〜 19:00 ポスター会場 (121講義室(本館2F))

[P1-2-18] 口腔内細菌の代謝産物が抜歯窩治癒不全時の抜歯窩骨壁への骨添加および炎症の遅延を引き起こす可能性

〇朝山 雄之1、津田 啓方2、鈴木 直人2 (1. 日大 歯 口外Ⅱ、2. 日大 歯 生化)

キーワード:短鎖脂肪酸、骨、マクロファージ

抜歯後の頻繁なうがいなどにより血餅が抜歯窩から脱落すると、抜歯窩骨壁が露出し、食物残渣などが入り込み、それらを栄養源として口腔内細菌が抜歯窩内で増殖し、高濃度の短鎖脂肪酸等の代謝産物を産生する。本研究では、短鎖脂肪酸が抜歯窩骨表面付近に存在するマクロファージや抜歯窩骨壁に存在する細胞へ及ぼす影響を調べることとした。LPSをマウスマクロファージ様Raw264.7細胞に作用させるとM1マクロファージのマーカーである誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)が産生誘導される。この系に口腔内細菌の培養上清を作用させたところ、Porphyromonas gingivalis (Pg)、Fusobacterium nucleatum (Fn)の細菌培養上清はLPS誘導のiNOS産生を抑制した。次に、細菌培養上清に含まれる短鎖脂肪酸濃度と同じ濃度の短鎖脂肪酸混合物(培養上清mimic)を作成し、作用させたところ、LPS誘導iNOS産生はPgおよびFnの培養上清mimicの作用で抑制された。これらの事から、PgおよびFnの培養上清に含まれる短鎖脂肪酸はM1様マクロファージの形成を抑制していると考えられた。次に、口腔内細菌培養上清mimicをマウス前骨芽MC3T3-E1細胞に作用させると、PgおよびFnの培養上清mimicの作用で石灰化が増強した。また、PgおよびFnの培養上清mimicはRaw264.7細胞のRANKL誘導TRAP陽性・多核細胞の形成を抑制した。これらの事から、PgおよびFnの培養上清中に含まれる短鎖脂肪酸は骨石灰化を増加させる方に働くことが解った。上記結果から考えると、抜歯窩治癒不全においては、抜歯窩のPgおよびFnは代謝産物の短鎖脂肪酸の作用により、抜歯窩壁の骨の肥厚とLPSによる炎症の誘導遅延を起こす可能性が示唆された。